2025年1月10日公開
最終更新日:2025年1月10日
人材紹介会社のスカウトサービスとは? 仕組みやメリット・デメリットを解説
少子高齢化をはじめとする社会状況の変化で企業では人材不足が深刻な問題になっています。そのような中で人材紹介会社や転職エージェントでは「スカウトサービス」を導入・活用して採用活動が行われることがあります。
この記事では人材紹介業界に転職を考えている人や人材紹介業界でキャリアアップを目指す人に向け、スカウトサービスの仕組みやメリット・デメリット、活用方法などを解説します。
人材紹介会社のスカウトサービスの仕組み
スカウトサービスとは、人材紹介会社や転職エージェントに登録している求職者に対して、メールなどを送ってスカウトを行う集客手法です。人材紹介会社側が求職者の希望やキャリア、スキルを考慮してマッチングしそうな企業を紹介するのが特徴です。
メールには企業の求人情報や具体的な待遇が記載されていることが多く、求人への応募を促す役割を持っています。内容に興味を持った求職者がすぐ面談に進めるよう、申し込み用フォームのURLが記載されている場合もあります。
アントプロダクション株式会社が管理するWEBメディア「リバティワークス」が実施したアンケート(※1)でスカウト(オファー)型サービスについて「知っている」と回答した人は92.5%でした。多くの人に認知されているサービスであることがわかります。
近年、少子高齢化の影響もあり、企業では慢性的な人材不足が問題になっています。求人サイトや転職サイト、自社のWEBサイトなどに求人情報を掲載して応募を待つだけでは、求める人材を確保するのに時間がかかる可能性があります。そのため現在、人材紹介会社や転職エージェントが求職者に対して積極的にアプローチできるスカウトサービスが注目されているのです。求職者側にとっても効率的に就職・転職活動を行えるサービスといえるでしょう。
※1 出典:リバティワークス「【独自調査】スカウト型転職サービスの評判は?優良スカウトを得るコツ」
https://liberty-works.jp/285886/
企業の採用担当者が直接スカウトを行うことも
スカウトは人材紹介会社に限らず、人材を求めている企業の採用・人事担当者から直接、求職者にメールを送るケースもあります。人材紹介会社や転職エージェントに経歴やプロフィールを登録している求職者の中から獲得したい人材や自社の即戦力となりそうな人材にしぼってスカウトを行います。
スカウト代行サービスとは
スカウト代行サービスとは、企業の代わりにスカウト業務全般を代行するサービスです。有能な人材を採用したいものの、採用活動に関わるリソースを多くは使えない企業に利用されています。
サービスを依頼する事業者やプランによって多少の差はありますが、おもに以下のような業務をアウトソーシングできます。
・採用計画や戦略などの立案
・スカウトする候補者の選定
・スカウトメールの作成・配信
・効果測定
採用計画や戦略の立案・策定は採用活動を始める上で欠かせないフェーズです。自社の社風や人材がほしい部署、採用の予定人数、人材に求めるスキルなどを明確にすることで、計画が立てやすくなります。
候補者選びでは人材代行サービス会社の高い知見に基づき、企業が求める理想の人材により近い人物にしぼってくれます。特に専門性の高い職種や管理職など、最適な人材が見つかりにくく採用が難しいケースでは、膨大なデータベースの中からターゲットを選定してくれるため、非常に役立つサービスといえるでしょう。
サービスによってはスカウトを行う媒体の選定や面接のセッティングなども依頼できます。人材紹介会社がスカウト業務だけを代行会社にアウトソーシングする場合もあります。
スカウト代行サービスを利用するメリット
採用活動は企業にとって非常に多くの工数がかかるものです。人材獲得に関わる一部のプロセスを委託することで他の業務に注力できるのは大きなメリットといえます。その分、入社後のサポートや育成に時間やリソースを使えます。
また、スカウト代行サービスを専門に扱う事業者は転職・就職市場の動向や状況などに詳しいスカウト業務のエキスパートです。スカウトから人材獲得までの対応を間近でみることで、人事・採用分野で貴重な知識が身につきます。そのノウハウは自社の財産になり、将来的に採用活動に活かせるでしょう。
スカウト代行サービスでは、転職する意思はあるものの具体的な行動を起こしていない転職潜在層にもアプローチが可能です。すべてのスカウト対象者が面談に進むわけではありませんが、候補者の分母が大きくなり、より理想に近い有能な人材を採用できる可能性が高まります。
スカウト代行サービスを利用するデメリット
サービスの利用には当然コストがかかります。料金体系はサービスを提供する事業者によって異なります。一定の金額を月々支払う「月額定額型」やスカウトメールの送信数によって料金が変わる「従量課金型」、スカウトから人材が採用できたときに報酬が発生する「成果報酬型」などがあります。
「成功報酬型」の場合は成果に対する費用のため、それほど負担に感じないかもしれません。しかし、その他の料金体系では採用に関わる費用が割高になる点はデメリットといえるでしょう。
スカウト代行サービスは採用の成功が担保されているわけではなく、期待していた結果を得られない場合もあります。また、採用活動のすべてをサービス事業者に任せきりにしてしまうと、自社でのノウハウは蓄積されません。採用や人事の担当者を戦略会議に同席させたり、各フェーズで情報を共有したりといった対策が必要です。
スカウトメールの種類と特徴
一口にスカウトメールといってもさまざまな種類があります。就職・転職活動をする上でどのような種類のメールかを知っておくと、実際に自身に届いた際に信頼できるオファーかどうか見極めができるでしょう。ここではスカウトメールの種類と特徴を解説します。
人材紹介会社・転職エージェントからのスカウトメール
人材紹介会社や転職エージェントは、登録している求職者の中から紹介する企業にマッチングする人を選んでスカウトメールを送ります。キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントの名前で送られてくるメールはより信頼度が増します。
求職者のプロフィールや職歴、スキルなどをみて合う企業を紹介してくれるので、採用率の高いスカウトといえるでしょう。メールに返信すると、担当のキャリアアドバイザーとの面談に進み、採用されるまでさまざまなサポートを受けられます。
企業の採用・人事担当者からのスカウトメール
企業の採用・人事担当者からのスカウトメールは、人材紹介会社と同様に求職者の経歴やスキルをみて、自社で獲得したい人材に向けてメールを送る仕組みです。そのため、より採用される可能性の高いスカウトといえます。企業からのメールには条件に合う不特定多数の人に送るケースと求職者個人に対して送るケースがあります。
後者のほうは企業側が積極的にアプローチを行うダイレクトリクルーティングのひとつです。現在、人手不足解消のための有効な手段として広まっています。個人あてにオリジナルの文面で送られるスカウトメールは採用率の高いオファーと考えてよいでしょう。
自動送信からのスカウトメール
人材紹介会社や転職エージェントから自動的に送られてくるスカウトメールもあります。求人を出している企業とマッチしそうな経歴の求職者に対してコンピューターが判別を行い、自動的に送信するメールです。
一斉に送られているため、自身が望む職種や条件とは異なる企業を紹介される場合もあります。興味があれば人材紹介会社に問い合わせしてみましょう。
【人材紹介会社向け】スカウトサービスのメリット
スカウトサービスは人材紹介会社にとってさまざまなメリットがあります。これから人材業界への転職を目指す人も知っておくとよいでしょう。スカウトサービスを行う際のメリットを詳しく解説します。
クライアント企業が求める人材に直接アプローチできる
求人を掲載して求職者からの応募を待つよりも積極的に、企業が求める条件を満たす個人にアプローチができる点はスカウトサービスの大きなメリットです。登録者のプロフィールや経歴をみて理想的な人材にアプローチでき、求職者がアクションを起こせば、面接日の調整や希望条件のヒアリングなど入社までの支援を行います。登録者と企業のミスマッチが起こりにくい点もメリットです。
求職者の集客に役立つ
求職者の集客には多くのリソースが必要です。スカウトサービスは集客に役立ちます。集客方法には自社のWEBサイトへの掲載や求人広告、SNSなどがありますが、費用も時間もかかります。特に開業して間もない会社や中小企業では、十分な集客が難しいかもしれません。
その点、スカウトサービスでは効率的に条件に合う求職者が見つけられます。集客方法のツールとしてスカウトメールを活用するとよいでしょう。
自社の認知度が高まる
就職・転職市場において大手企業は知名度が高く有利といえますが、スカウトサービスをうまく活用すれば自社の認知度アップにつながります。これまで知られていなかった会社からスカウトが届けば、求職者はおのずとその会社に注目します。特に新卒・第二新卒など、就職・転職活動を始めて間もない求職者にも認知してもらえ、よいアクションが期待できるでしょう。
集客・採用力が強化できる
スカウト業務では、求職者の目をひくスカウトメールの作成、ターゲットの絞り込みなど、採用に関するノウハウが得られ、自社の採用力が向上します。 人材紹介会社にとって大きな強みになり、一連のプロセスはキャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントのキャリアアップにもなるでしょう。
コストの削減につながる
最適な人材を見つけクライアント企業に紹介するまで、成功すれば報酬が得られるとはいえ、さまざまなコストが発生します。スカウトメールならそれほどコストがかからず、求職者一人にかかる費用も抑えられます。
【人材紹介会社向け】スカウトサービスのデメリット
ここでは人材紹介会社に転職したい人に向けて、スカウトサービスのデメリットについて解説します。メリットだけでなくマイナスになり得る面も知っておくと、実際に業務に取り入れるときに検討する材料になり便利です。
導入に時間がかかる
スカウトサービスは求職者にピンポイントにオファーできる非常に有効な方法ですが、ターゲットの選定やスカウトメールの作成など、導入に時間や工数がかかる点がデメリットといえます。
登録者側がプロフィールや経歴をすべて記載していない場合は、絞り込みが難しくなります。また、登録者が学生や第二新卒の場合は判断材料となる職歴が少ないことから、企業が求める人材かどうかの見極めがより難しいかもしれません。スカウトしたい人物像をしっかり定めておくとよいでしょう。
また、スカウトメールの作成では開封されやすく、メールを見た求職者が次のアクションを起こしやすい文面にすることが大切です。せっかくメールを送っても開封されなければ成果にはつながりません。成果が出なくても次に活かせるよう、部署全体で効果測定をして改善していきましょう。
競合他社が多い
人材紹介会社は競合他社が多く、競争率が高い業界です。厚生労働省の統計(※2)
によると民営職業紹介事業所数は2012年度の17,771ヶ所から右肩上がりで上昇が続き、2023年度には31,237ヶ所と大幅に増加しています。2024年度以降も増加が予測され、ますます競争率は高くなっていくでしょう。
求職者も複数の人材紹介会社に登録している可能性があるため、攻めの採用が必要です。競合他社とは違う戦略や施策が欠かせない時代といえるでしょう。
※2 出典:厚生労働省「民営職業紹介事業所数の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000920809.pdf
【求職者向け】スカウトサービスを利用するメリット
スカウトサービスは人材業界で徐々に浸透しており、求職者にとってもさまざまなメリットやチャンスがあります。より希望にそった就職・転職ができるようにスカウトサービスのメリットを知っておきましょう。
希望する条件で就職・転職できる可能性が高まる
スカウトサービスでは登録しているプロフィールから求職者のスキルや経験、希望条件をみて、企業の求めるニーズに合う人に対して送られます。そのため、自身が希望する職種や条件の企業に就職・転職できる可能性が高くなるのが魅力です。
人材紹介会社のキャリアアドバイザーから送られてくるスカウトメールの場合、その担当者が入社前の準備や入社後のフォローなど、手厚くサポートしてくれます。条件面で折り合わない点があれば、間に入って交渉も行ってくれるので気軽に相談するとよいでしょう。入社後に「思っていた条件とは違う」といったミスマッチも少ないといえます。
効率的に就職・転職活動ができる
スカウトサービスでは求職者は人材紹介会社からスカウトが届くため、自身が求人情報を探してエントリーするという手間を省けます。特に働きながら転職活動をしている人は仕事が忙しく、なかなか求人情報をチェックしたり面接を受けたりといった時間がとれないこともあるでしょう。スカウトサービスでは人材紹介会社に登録しておくだけで希望に合った企業を紹介してくれるため、スカウトが届いてから就職・転職活動を始めればよいのです。「転職活動をしていることを現在の職場にバレたくない」という人に向いています。
また、いつか転職したいと考えている転職潜在層でも理想の条件や職種、ポジションに出会えたタイミングで活動を始めることも可能です。
非掲載・スカウト限定の求人に応募できる
スカウトサービスによっては人材紹介会社の求人情報や転職サイトなどに掲載されていない非公表の求人やスカウト限定の求人に応募できることがあります。これらの求人は企業側に新規事業や新部署を立ち上げる予定があるものの、広く公表したくない、または公表して応募が殺到し、採用までのプロセスが煩雑になるのを避けたい、などの理由で非公表にしているのです。
非公表求人には公開されている求人よりも待遇や条件、ポジションが魅力的なものが多く、求職者にとってはキャリアアップのチャンスにもなります。また、非公表やスカウト限定の求人は、多くの人が目にするものに比べて競争率が低く、採用される確率が高くなる傾向にある点も大きなメリットです。
自分の市場価値が把握できるチャンス
スカウトを受けたときは自身の市場価値が把握できるチャンスでもあります。スカウトで提示された企業や役職、待遇などをみれば、自身のスキルや経歴が希望する市場でどれくらいの価値があるのかを客観的に把握できます。
自身の市場価値の把握は転職においてもキャリアアップにおいても非常に重要です。現職よりも高い年収や役職でオファーがあれば、仕事に対する意欲が増すでしょう。また、将来キャリアップをしていく上でどのスキルを伸ばせばいいのか、何か足りないか、などを分析する指標にもなります。自身のキャリア形成を考えるのに役立つでしょう。
スカウトだけの特典がある場合も
人材紹介会社から送られるスカウトメールには、スカウトだけの特典があるケースもあります。通常、企業での面接選考は2~3回行われることが多いのですが、スカウトの場合、そのまま最終選考に進める企業も少なくありません。当然、内定をとれるまでの期間も短く、スムーズに就職・転職ができます。それだけ有能な人材は重宝されるのです。
スカウトサービスを上手に活用するコツと注意点
スカウトサービスを利用したことのない人の中には「希望に合わない企業を提案されるのでは」「きちんとした企業を紹介してもらえるのか」という不安を持っている人も多いのではないでしょうか。ここではスカウトサービスを活用するコツと注意点をご紹介します。
プロフィールを充実させる
スカウト候補者を選定するときには、求職者のプロフィールをみて判断します。プロフィールを充実させておけば、担当者の目にとまりやすくなります。スキルや職歴はできるだけ詳しく書きましょう。「〇〇の資格を活かして営業成績を上げた」など具体的なアピールポイントを書きます。
また、企業によっては資格や経験よりもヒューマンスキルを重視するところがあります。コミュニケーション能力や交渉力、問題解決能力など、自身の強みをしっかりと記載しましょう。プロフィールは登録したときのままにせず、常に更新して現在の自身の価値をアピールするとよいでしょう。
条件面を慎重に確認する
人材紹介会社からのスカウトメールの多くは具体的な企業名や職種、職務内容、年収、待遇などが記載されています。また、先にご紹介したように書類選考免除や最終選考に進めるなどの特典が書かれていることもあります。
これらの条件は慎重に検討して、実際に人材紹介会社の担当者と面談を行った際には正確な情報かを確認しましょう。スカウトメールに具体的な待遇が記載されていないときも同様に確認が必要です。
信頼できる人材紹介会社選び
数多くある人材紹介会社の中には信頼できない会社も存在します。求職者にとって就職・転職は人生の大事な局面です。本当に信頼できる人材紹介会社を選びましょう。送信元の人材紹介会社のWEBサイトや実績、口コミなどを調べて評判なども把握しておきましょう。
転職を考えているなら、人材紹介会社や転職エージェントが開催するセミナーや勉強会への参加、資料請求などをするのもよいでしょう。
業界・職種に特化した人材紹介会社を選択する
スカウトメールの中には希望する業種とは異なる企業を紹介されるケースもあります。これまでの経験を活かして異業種にチャレンジするよい機会となり得ます。しかし、前職と同じ業種でさらにスキルアップを目指したい人には、業界・職種に特化した人材紹介会社を選びましょう。
特化型の人材紹介会社は、業界の内情にも詳しく求人数も多く抱えているため、自身で求人を探すよりもスカウトを受けたほうが結果、理想的な企業への入社が期待できます。
詐欺やスパムメールに注意
スカウトメールの中には悪質な詐欺まがいのものやスパムメールも存在するため注意しましょう。怪しいと感じたらリンクや添付ファイルは開かないのが鉄則です。本当に人材紹介会社から送られてきたメールなのか、その会社に問い合わせてみるのもひとつの方法です。
人材紹介会社のスカウトをうまく活用して就職・転職活動を効率的に進めよう!
就職・転職活動をスムーズに進めるためには信頼できる人材紹介会社選びが大切です。登録している人材紹介会社がスカウトサービスを導入していれば、仕組みやメリット、デメリットの知識を持った上でうまく活用したいものです。好条件で理想通りの企業が見つかるかもしれません。スカウトサービスを活用して就職・転職活動を効率的に進めましょう。
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