2025年6月2日公開
最終更新日:2025年6月8日
人材紹介(有料職業紹介)業の免許(許認可)を取得するには? 要件や費用、申請方法を解説
昨今さまざまな業種で人材不足が課題となっており、人材紹介の需要の高まりから、人材紹介業を始める業者が増えています。
人材紹介業を始めるには、免許が必要です。免許を得るには、どうすればよいでしょうか。本記事では人材紹介の免許を取得するために満たすべき要件、免許取得にかかる費用や申請方法について解説します。
人材紹介業を成功させるためのポイントも紹介しますので、最後まで御覧ください。
人材紹介業に免許が必要な理由
人材紹介業を行うには、厚生労働大臣の許可(つまり免許)が必要です。なぜ免許が必要なのでしょうか。この背景にはどのようなことがあるか、そして免許がない場合どのような罰則が発生するのかについて解説します。
人材紹介業を行うには免許が必要
人材紹介業を始めるには、厚生労働省が定める「職業安定法」に基づいた「有料職業紹介事業許可」を取得しなければいけません。これは、人材紹介業の適正な運営を確保し、求職者の権利を守るために設けられています。その理由は、人材紹介業が人々の職業生活に直接影響を与える社会的責任の重い事業だからです。
転職は求職者にとって人生の重要な決断です。そのため、不適切な紹介や詐欺的な行為から保護する必要があります。また、企業側も優秀な人材を確保するため、信頼できる紹介会社を求めています。このことから、人材紹介業者は適切なマッチングと職業選択の支援を伴う責任ある業務であるといえます。もし無許可で誰でも人材紹介業が行えたなら、紹介先でのトラブルが起きた際に法的な責任の所在が曖昧になり、求職者の不利益につながる恐れがあります。
こうした事態を防ぐため、国は許認可制を設け、適切な運営体制や資本要件、個人情報保護などをチェックした上で事業者に免許を与えているのです。人材紹介業者は免許を取得することで、一定の基準を満たし、適切なサービスを提供することが求められます。
人材紹介業を行うには免許が必要
免許がないまま有料職業紹介を行うことは、職業安定法で禁止されています。もし、免許なしで人材紹介業を行うと「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という罰則が科される可能性があります。罰則以外にも、当然無許可での業務継続は不可能であり、求職者や取引先企業からの信用を失い、社会的信用の失墜につながります。
免許がなくとも、届出だけで人材紹介業ができる無料職業紹介もあります。例えば、学校や自治体、NPO法人などの団体が行っている人材紹介がこれにあたります。無料職業紹介も、免許が不要とはいえ届出なしで行ってしまうと同様の罰則が科される可能性があります。
注意しないといけないのは「免許が必要と知らず行った行為により、法令違反をしてしまう」ことです。善意のつもりで人材を紹介したところ、実際は免許が必要であり違反行為だった、という事例は少なくありません。このようなことを避けるためにも、事前に詳しい情報を確認しておきましょう。
▼免許がない場合の事例や、免許がなくともできることなど、さらに詳しい情報が必要な人は、以下の記事も参考にしてみてください。
人材紹介業で免許がないとどうなる? 免許が必要な理由、違法性がある事例などわかりやすく解説
人材紹介業の免許取得の要件
人材紹介業の免許「有料職業紹介事業許可」を取得するには、要件を満たさなければいけません。具体的には、以下の3点です。
- 職業紹介責任者の専任
- 個人情報の適正管理
- 財産に関する要件
それぞれについて詳しく解説します。
職業紹介責任者の専任
人材紹介業の免許取得の要件として、各事業所に1名以上「職業紹介責任者」を専任で配置する必要があります。職業紹介責任者とは、法令遵守のもとで業務を適正に運営する責任を持つ役割を担います。職業紹介責任者になるには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 成人であること
- 厚生労働省指定の「職業紹介責任者講習」の受講すること
- 3年以上の職業経験
職業紹介責任者は専任制であるため、他の事業所との兼任は原則できません。また、職業紹介責任者を適切に任命しない場合、免許申請は通らないだけでなく、取得後に行政指導の対象となることもあるので、注意が必要です。
個人情報の適正管理
人材紹介業の免許取得の要件として、事業所内での個人情報保護体制を整備し、個人情報を適正に管理することが必要です。これは、人材紹介業において、求職者の履歴書や職歴、連絡先などの個人情報を取り扱うからです。具体的な要件として、以下が挙げられます。
- パスワード設定や暗号化などのシステム管理
- 書類の鍵付き保管や入退室記録管理など物理的セキュリティの確保
- 個人情報にアクセスするための権限の設定
- 個人情報に関するルール設定
また、個人情報保護方針の明文化や、社員教育の実施も必要です。万が一外部への無断提供や漏洩が発生した場合、法的責任を問われるだけでなく、企業の信用失墜にも直結します。
財産に関する要件
人材紹介業の免許取得の要件として、事業運営に必要な最低限の資金を保有している必要があります。具体的な要件は以下のとおりです。
- 資産総額から負債を差し引いた基準資産額が500万円以上
- 現金・預金が150万円以上
この要件を満たしていれば、法人でなくとも個人でも申請・取得できます。許可を受領しても継続的に財産要件を満たしていることを証明する必要があるため、健全な事業運営が欠かせません。
人材紹介業の免許取得に必要な資料
人材紹介業の免許取得申請を行うには、多くの書類が必要です。詳しくは、各都道府県の労働局のサイトに一覧がありますので、そちらを御覧ください。ここでは簡単に必要な資料の概要について解説します。
提出書類
提出書類である以下の4点は、様式を各都道府県の労働局のサイトからダウンロードして利用できます。それぞれ正本1通、写し2通提出します。
- 職業紹介事業許可申請書
- 職業紹介事業計画書
- 職業紹介事業取扱職種範囲等届出書
- 届出制手数料届出書(有料職業紹介事業で届出制手数料による場合のみ)
書式や記載内容に誤りがあると、許可審査に時間がかかる可能性があります。より正確な提出を行うためにも、事前に相談窓口でチェックを受けておくことをおすすめします。
添付書類
添付書類は、それぞれ正本1通、写し1通提出します。
- 定款または寄附行為
- (目的に「有料・無料職業紹介事業」または「職業紹介事業」の記載が必要)
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- (目的に「有料・無料職業紹介事業」または「職業紹介事業」の記載が必要)
- 代表者、役員の住民票および履歴書
- 職業紹介責任者の住民票および履歴書(本人の署名または押印が必要)
- (職業紹介責任者が役員と同一の場合は省略可能)
- 職業紹介責任者講習受講証の写し(5年以内の受講日であるもの)
- 最近の事業年度における貸借対照表・損益計算書および株主資本等変動計算書
- 最近の事業年度における法人税の納税(確定)申告書の写し
- 法人税の納税証明書
- 職業紹介事業を行う事業所ごとの事業所の使用権を証明する書類
- (不動産賃貸契約書の写しや不動産登記事項証明書など)
- 業務運営に関する規程
- 個人情報適正管理規程
- 手数料に関する書類(上限制手数料表もしくは届出制手数料にかかる手数料表)
- 事務所のレイアウト図(個人情報の保管場所の記載が必要)
数が非常に多いので、漏れがないように注意が必要です。特に不足や不備があると再提出を求められたり、審査が遅れたりします。事前に必要な書類をリストアップしておき、確実に提出できるようにしておくようにしましょう。
参考:有料職業紹介事業とは?許可要件や許可申請の流れを解説! | ピタリク
人材紹介業の許認可申請に必要な費用
人材紹介業の許認可申請に必要な費用としては、まず申請そのものに登録許可税として90,000円が必要です。銀行や税務署等で納付し、領収証書を申請書類として提出します。
また、収入印紙代が1事業所につき50,000円必要であり、複数の事業所を申請する場合は、追加の事業所1つにつき18,000円加算されます。
他にも申請要件となっている、職業紹介責任者を配置するための「職業紹介責任者講習」の受講費用が必要です。受講費用は実施期間や会員区分により異なりますが、おおよそ約8,800円から13,000円程度です。また、個人情報を適切に保管するための保管庫など、要件を満たすために必要なものも揃えるためには、その分の費用もかかります。
その他任意ですが、免許取得に必要な申請書類の作成を社会保険労務士に代行してもらう方法があります。このサービスを利用すると、代行業者によりますが、おおよそ20万円前後かかります。申請書類の作成は不備があれば何度も修正する必要があり、労力と時間がかかります。そのため、費用はかかりますが代行業者に依頼するのも方法の1つです。
人材紹介業の許認可申請から登録までの流れ
人材紹介業の許認可申請から登録、許可取得までは通常約2~3か月程度かかるため、計画的に実施することが大切です。許認可申請のプロセスは大きく3つのステップに分かれます。詳しく見ていきましょう。
事業所の設立
人材紹介会社を起業するには、最初に事業所を設立します。事業所も要件が定められており、満たさなければ許可が得られません。例えば、個室やパーティションで区切るなど、プライバシーを保護しつつ、求職者に対応できることが重要です。また、個人情報を保管できるように施錠可能であること、来客対応が可能な環境が整っていることなどが求められます。また、事業所の面積はおおむね20平方メートル以上必要です。これらの要件をしっかり確認し、それを満たすようにしましょう。
職業紹介事業者講習の受講
人材紹介業の免許申請においては、「職業紹介責任者」の選任が必須です。職業紹介責任者になるには講習受講を受講しなければいけません。講習は厚生労働省の指定を受けた民間団体が定期的に開催しており、1~2日の日程で、座学形式で実施されます。講習の内容として、以下が含まれます。
- 職業紹介事業の運営方法
- 職業安定法の基礎知識
- 個人情報保護に関する基礎知識
- 労働契約に関する基礎知識
- トラブル対応
- 求人者・求職者への対応方法
受講後には修了証が発行され、これを申請書類に添付することで、講習受講の要件を満たしたことになります。職業紹介責任者となる人が未受講の状態だと許認可申請を受け付けてもらえないため、申請の前に受講しておきましょう。
許認可申請
事業所の設立と職業紹介事業者講習の受講が完了したら、許認可申請の手続きに入ります。申請に必要な提出書類および添付書類を準備し、事業所所在地を管轄する労働局で申請します。申請書類が多いため、提出前に最終チェックを必ず実施しましょう。相談窓口でチェックしてもらうと、スムーズに申請を行えます。逆に漏れがあると申請を受け付けてもらえない場合や、審査に時間がかかる可能性もあります。
申請後、労働局で書類審査と実地調査が行われ、不備や説明不足があると追加提出や修正が求められます。問題がなければおよそ2か月〜3か月で許可証が交付され、いよいよ事業を開始できます。
人材紹介業で成功するために押さえるべきポイント
人材紹介業の免許取得は事業開始のスタートラインであり、ここから事業を開始して運営していかなければいけません。運営開始後も継続して要件を満たす必要があるなど、人材紹介業を成功させることは簡単ではありません。ここでは、人材紹介業を成功させるためのポイントを解説します。
登録者数を増やす
人材紹介事業の成否を左右する最も重要な要素は、求職者の登録数です。登録者数が多いと、企業の多様な求人ニーズに対応でき、マッチングの成功率も大幅に向上します。一方で登録者が少ないと、特に専門性の高い職種や特定のエリアに特化した事業を行う場合、企業のニーズに応えられず、紹介成約に結びつきません。そのため、継続して登録者数を増やす施策を打ち出していくことが大切です。
登録者数を増やすには、Web広告やSNS、YouTubeなどを活用した情報発信、セミナー開催など多様なチャネルを活用し、集客を強化することが有効です。さらに、職種別や年代別のニーズに関連したコンテンツを提供して、検索や口コミを広げたりすることで、質の高いリードを獲得しやすくなります。
エージェントを確保する
人材紹介業で成功させるには、エージェント(キャリアアドバイザー)の存在が欠かせません。エージェントは、求職者と企業の間に立って双方のニーズを丁寧に汲み取り、最適なマッチングを行う役割を担います。
エージェントの具体的な業務内容は以下のとおりです。
- 求職者と面談を行い、希望や悩みをヒアリングする
- 求職者の希望に合った企業を選定し、企業側に候補者として推薦する
- 履歴書および職務経歴書の作成、面接対策などのサポートを行う
- 面接日程や給与・勤務条件など、求職者と企業の間での調整を行う
- 求職者の入社後のフォローを行う
- 市場動向を調査し、求職者及び企業に情報を提供する
経験豊富でコミュニケーション能力が高いエージェントを確保することで、成約率や顧客満足度の向上、リピート案件の増加が期待できます。逆に、エージェントの能力が低いと、顧客離れや事業の信頼性が低下する可能性があります。エージェントには業界知識や法律知識、営業力も必要なため、採用後の教育体制を整えておきましょう。副業や業務委託形式での人材確保も視野に入れつつ、柔軟な働き方を提供すると優秀な人材が得やすくなります。
転職した人がすぐに退職しないようフォローアップを行う
人材紹介業では「企業に求職者を紹介し、採用され入社したらそれで終わり」ではありません。求職者が入社後すぐに退職してしまうと、企業からの信頼を損ねるだけでなく、紹介手数料の返金などの契約上のリスクも生じます。これを防ぐためには、入社後のフォローアップが重要なポイントです。
具体的には、入社直後および3カ月後・6カ月後に定期的な面談を実施し、入社後の状況や職場への適応状況、不安点などを確認します。また、企業側にも職場環境の整備や受け入れ体制の確認を行うことで、離職のリスクを最小化できます。このようなフォローをいれることで、長期的な定着をサポートできます。紹介の質を高め、求職者・企業双方からの信頼を積み重ねるためにも、継続的なフォローは欠かせません。
人材紹介業のビジネスモデルを理解し、利益率を改善する
人材紹介業を安定して運営するには、ビジネスモデルを理解し、利益率を改善していくことが大切です。人材紹介業の収益は、一般的に成功報酬型で成り立っており、求職者が企業に採用されて初めて報酬が発生します。紹介手数料は転職者の年収の30~35%程度といわれています。
また事業を運営するために必要なコストとして、集客のための広告費や人件費、システム手数料などがあります。これから利益率を高めるためには、コストをなるべく抑えつつ、成約率を高めることが重要です。例えば、高単価案件を獲得したり、既存登録者の紹介制度を導入したりして広告費を抑え、質の高い人材を得るなどの戦略も有効です。このようにビジネスモデルを理解して利益率を改善しましょう。
人材紹介業の免許を取得し、開業を目指そう
人材紹介業を始めるには、厚生労働省が定める免許「有料職業紹介事業許可」の取得が必要です。人材紹介業を始めるまでの流れは、以下のとおりです。
- 事業所の設立
- 職業紹介事業者講習の受講
- 許認可申請
免許を得るためには、さまざまな要件を満たす必要があります。事前に要件の内容を確認し、事務所の設立や職業紹介事業者の設置を行いましょう。
許認可申請においては、提出書類、添付資料を用意します。書類の様式は各都道府県の労働局のサイトからダウンロードして利用できます。提出書類や添付書類に不備や不足があると、何度も修正が発生したり、申請を受け付けてもらえないなど、労力と時間がかかります。事前に十分準備したうえ、提出前には相談窓口でチェックしてもらうことをおすすめします。費用はかかりますが、社会保険労務士に申請を代行してもらうのもよいでしょう。
また、設立後も要件を継続して満たさねばいけないことに注意が必要です。運営を成功させるためには、コンテンツの発信や、エージェントの確保、採用後のフォローなどを継続的に行っていきましょう。特に優秀なエージェントの確保は人材紹介業を軌道に載せるためにおすすめです。
弊社では、人材系職種に特化した採用支援サービスをご提供しており、豊富に人材を揃えています。これから人材紹介会社の起業を考えており、エージェントの採用をご検討の場合は、ぜひご相談ください。
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