2025年9月2日公開
最終更新日:2025年9月2日
投稿者:キャリアアドバイザーAgent求人ナビ編集部

人材紹介業の免許取得にかかる費用は? 免許取得の要件や事業運営に必要な費用をわかりやすく解説

求職者に働く企業をあっせんする人材紹介会社や転職エージェントなど、人材紹介業を始めるには国の許認可が必要です。免許取得には、どれくらいの費用が必要なのかは事業計画を立てる上で非常に重要なポイントです。この記事では人材紹介業の免許取得にかかる費用やその内訳、免許取得に必要な要件、手続き方法などをわかりやすく解説します。これから人材紹介ビジネスを起業したいと考えている人はぜひ役立ててください。

 

会員登録

 

人材紹介業の免許取得にかかる費用

人材紹介業は、仕事を探している求職者と企業をマッチングさせ、手数料などの報酬を得るビジネスの場合、無料の紹介事業と区別して「有料職業紹介事業」に分類されます。事業を行うためには、会社の本社所在地のある都道府県の労働局に届けを出し、厚生労働大臣の許可を得て免許の取得が必要です。免許取得にかかる費用をご紹介します。

 

免許取得にかかる基本的な費用

人材紹介業の免許取得にかかる基本的な費用は次の通りです。

 

・登録免許税 90,000円

・印紙費用 50,000円

 

人材紹介業の免許には最低でも140,000円が必要です。登録免許税は許可1件につき課される国税で「登録免許税法」で定められています。銀行や郵便局、都道府県労働局管轄の税務署にて現金で納付します。領収証書は申請の時に必要になるので保管しておきましょう。

 

印紙費用は、許可申請手数料として収入印紙が必要です。本社以外に複数の事業所を申請する場合は、事業所1件あたり18,000円が追加で必要になります。例えば本社を含む3つの事業所で申請を行う場合、次のように計算します。

 

50,000円+18,000円×(申請する事業所数-1)=86,000円

 

講習費用

人材紹介業では1つの事業所ごとに1名の職業紹介責任者が必要です。具体的には従業員50名につき1名のため、50名以上の事業所では1名以上を選任しなければなりません。責任者の選任は、人材紹介業を営むにあたって、事業が適正に行われることを担保するものです。

 

職業紹介責任者は、厚生労働大臣認定の指定機関にて「職業紹介責任者講習」を受講する必要があります。受講料は講座を受ける機関によって異なりますが、10,000円前後です。講習実施機関については、厚生労働省のサイトを参考にしましょう。

 

厚生労働省「職業紹介責任者講習の実施機関等について」

 

人材紹介業の免許取得に必要な要件とは

パソコンが置かれたデスクが並ぶオフィス

人材紹介業は国の認可事業であり、免許取得には費用以外にもいくつか要件が定められています。

 

・職業紹介責任者

・会社設立時の財産

・事業所の環境

・個人情報の管理方法

・その他の要件

 

それぞれを詳しく解説します。

 

職業紹介責任者

既にご紹介したように適正な事業運営のため、1事業所につき1名、規模が大きい場合は50名あたり1名以上の職業紹介責任者を在籍させなければなりません。要件は、次のように定められています。(※1)

 

・職業安定法第32条が定義する欠格事由に該当していないこと

・職業紹介責任者講習会を受講していること(許可又は許可の有効期間の更新に係る申請の受理の日の前5年以内の受講に限る)

・3年以上の職業経験を有すること

 

ここでの「欠格事由」とは、禁錮以上の刑に処された、成年被後見人、職業紹介事業の許可を5年以内に取り消された、などの事由です。創業者(代表者)以外に職業紹介責任者が必要な規模の場合、実務経験が豊富で信頼できる人物に依頼するのが望ましいです。

 

※1 出典:厚生労働省「職業紹介事業現行の制度・運用」

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000140914.pdf

 

会社設立時の財産

人材紹介業は開業のハードルが比較的低い業種といわれていますが、財産要件もあります。起業する際の資本金としての性質をもっています。

 

・基準資産額が500万円以上

・自己名義の現金・預金が150万円以上

 

基準資産額は借入などの負債を差し引いた金額です。預貯金だけでなく、株式や有形固定資産なども含まれます。1事業所あたりの金額なので、500万円に事業所数を乗じた金額が必要です。個人名義で住宅ローンなどの負債がある場合、法人化して別に財産管理するのがよいでしょう。現金・預金は、複数の事業所がある場合、追加の事業所あたり60万円を加算した金額になります。

 

同じ人材業界でも、人材派遣業は基準資産額が2,000万円、現金・預金が1,500万円ですから、人材紹介業のほうが財産面でのハードルは低いといえるでしょう。

 

事業所の環境

事業所の環境、設備、構造などにも細かく要件が設けられています。事業所を設置する場所は、風営適正化法の規制対象となっている店舗などが密集する場所は避けます。さまざまな業種の店舗が密集していて判断に迷う場合は、労働局に相談するとよいでしょう。

 

事業所の設備に関しては次の要件がポイントです。(※2)

 

・プライバシーを保護しつつ求人者又は求職者に対応することが可能であること

・事業所の面積がおおむね20㎡以上であること(任意)

 

プライバシーに関する要件は、具体的には事業所内に個室を設置したり、パーテーション(高さが180cm以上)などの仕切りで区切られたスペースを確保したりといった方法が該当します。事業所の構造上、こうしたスペースの確保が難しい場合は、インターネットを利用した非対面の面談ができれば要件を満たせます。利用者(求職者)のプライバシーが十分に保護される環境作りに努めることが大切です。

 

事業所の設置は、立地環境や設備などすぐには対応できない要素が多いため、早めの準備が必要です。

 

※2 出典:厚生労働省「有料職業紹介事業 許可要件(概要)」

https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/002201639.pdf

 

個人情報の管理方法

求職者の重要な個人情報を扱う人材紹介業では、情報の取扱いが非常に重要です。許可要件でも徹底した情報管理が求められています。社内で「個人情報管理規程」を作成して、情報の取扱い範囲や管理方法などを明確にする必要があります。

 

履歴書や職務経歴書、エントリーシートなどの個人情報は、必ず本人の同意を得て、本人から収集することが必須です。さらに個人情報の収集・使用などの目的を自社のWebサイトに明文化して掲載しなくてはなりません。

 

開業後も個人情報の取扱いルールを明確にした上で、情報セキュリティに精通した責任者の任命や社員教育の徹底などの対策をとりましょう。

 

その他の要件

上記に挙げた要件の他にも、適正で法令に即した事業運営のために注意すべき点があります。

 

・人材紹介業を本来の目的以外の会員獲得・宣伝・組織拡大の目的の手段にしない

・定められた手数料以外の金品の徴収をしない

・徴収する手数料が明確にわかる手数料表を用意し、事業所内に掲示、またはWebサイトに掲載する

 

法令はたびたび改正されるため、専門家に相談したり最新の情報を確認したりといった方法をとりましょう。

 

人材紹介業の免許取得までの準備と申請の流れ

事業計画書と電卓、ペン、キーボード

人材紹介会社や転職エージェントなどの会社を立ち上げるには、実に多くの準備が必要です。免許申請の流れや所要日数、注意点などを順に解説します。

 

免許取得までの準備

まずは、先に挙げたような免許取得に必要な条件を満たしているかを慎重に確認しましょう。特に事業所の準備には費用も時間もかかるため、早めに物件探しをしておくと安心です。

 

必要書類は非常に多く、取得に時間を要するものもあります。必要な書類は以下の通りです。(※3)

 

・職業紹介事業許可申請書

・職業紹介事業計画書

・届出制手数料届出書

・職業紹介事業取扱職種範囲等届出書(職種・地域を定めて届け出る場合のみ)

 

これらの書類は管轄の労働局のホームページでダウンロードできます。添付書類もあわせて一覧表示されているので参考にするとよいでしょう。添付書類は「定款」や「登記簿謄本」など、主に開業する会社が独自で用意するものが多いです。

 

補足資料の提出を求められる場合があるため、事前に労働局に相談をするか、行政書士や社会保険労務士、代行会社などの専門家に任せるのがおすすめです。労働局では定期的に人材紹介業へ新規参入する人向けに説明会を行っているので、気軽に参加してみましょう。

 

※3 出典:東京労働局「有料無料職業紹介関係 3様式集、添付書類一覧」

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/yuryou_muryou_shokugyou.html

 

労働局への申請

申請書類と添付書類がそろえば、事業所所在地の管轄の労働局窓口にて申請を行います。申請と書類の受理は半日あれば完了しますが、時期によっては窓口が混み合うことがあります。年度末や年度末、週明けなどは混雑します。事前に問い合わせや予約をしておくとスムーズに進むでしょう。窓口で不足書類がないか確認してもらえます。

 

開業予定の2ヶ月前には申請が必要です。追加や不足している書類があると、再度労働局に出向かなくてはなりません。余裕をもって申請しましょう。

 

書類審査と現地審査

労働局では提出された申請書類や添付書類をもとに審査が行われます。審査通過後は労働局による事業所の現地調査にうつります。抜き打ちではなく、日程は事前に連絡があるため、環境をきちんと整えておきましょう。

 

申請時に提出した「事務所のレイアウト図」をもとに、人材紹介業を営むのに必要な条件を満たしているかをチェックします。

 

・事務所は適切なエリアにあるか

・個人情報の保管場所(施錠できる収納スペース)

・面談スペースの確保

 

これらが重点的に見られます。調査自体は1時間以内に完了することが多いです。

 

免許交付後、事業開始

現地調査をクリアすれば、認可が下りて事業を開始できます。申請から2〜3ヶ月が目安です。免許を新規取得後は3年で更新が必要です。一度目の更新後は5年ごとになります。

 

▼人材紹介業の免許取得、申請方法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

人材紹介(有料職業紹介)業の免許(許認可)を取得するには? 要件や費用、申請方法を解説

 

人材紹介業の運営にかかる費用

「Cost」の文字と¥マーク、電卓を持った女性

人材紹介業を始めるには、許認可関連の費用だけでなく、当然、その他の諸費用もかかります。フェーズごとにかかるコストをそれぞれご紹介します。

 

イニシャルコスト

初期費用は、先にご紹介した免許取得に関わる次の費用をまず予算に組み入れておきましょう。

 

・登録免許税 90,000円

・印紙費用 50,000円

・職業紹介責任者講習費用 10,000円前後

・資本金 500万円以上

・自己名義の現金・預金 150万円以上

 

その他で大きな支出となるのが、免許取得の要件を満たすオフィスの用意にかかる費用です。事業所の所在地やオフィスの形態にもよりますが、賃料・敷金をあわせると50万円〜100万円が目安です。自宅を事業所に利用する選択肢もあります。自宅の場合でも設備や個人情報の取扱いに関する条件を満たすのが必須なので注意しましょう。

 

また、免許申請の準備や法人登記手続きはやや複雑です。手続き関連は社会保険労務士に依頼して、営業開始後、事業を軌道に乗せるための準備に注力するのもよいでしょう。社労士への報酬はバラつきがありますが、およそ10万円~20万円です。労働社会保険や労務の専門家なので、別料金になりますが開業後にも何かと相談できるメリットがあるため検討してみましょう。

 

ランニングコスト

ランニングコストには、毎月のオフィス賃料の他、事業継続に必要なコストがかかります。重要なのは次の3つです。

 

・人件費

・求職者集客費用

・求人獲得費用

 

人件費は事業立ち上げと円滑な業務遂行に欠かせないコストです。人材紹介業には法人開拓・営業を担当するリクルーティングアドバイザー、求職者のサポートや個人営業を行うキャリアアドバイザー、管理者、事務職などが必要です。採用には、1人あたり30万〜40万円を目安に試算しておきましょう。

 

求職者集客は、求人者がいないと事業が成り立たないため、重視したいポイントです。新規に人材紹介業を始める場合、ノウハウやコネクションがなく、集客のハードルは高いといえます。大手求人サイトのスカウトサービスやエージェント向けの求人掲載サービスなどを利用すると効率的に集客が可能です。

 

ただし費用は月額10万円〜20万円、成果報酬金額は売上の20〜30%とかなり多くのコストがかかります。複数のサイトを利用すればそれだけ費用がかさみます。その他、次のような集客方法も並行して実践しましょう。

 

・オウンドメディア

・SNS

・Web広告

 

これらの方法は利用者の認知までに時間がかかるため、中長期的な視点で継続していくのがよいでしょう。

 

求人獲得も集客と同様に重要です。集客したものの、紹介する企業がなければ事業になりません。採用時には営業職を優先して採用し、法人営業に注力しましょう。求人獲得費用は人件費に直結します。

 

コスト削減のポイント

コストを抑えたい場合は、レンタルオフィスの活用を検討するのもよいでしょう。事業所に関する要件は通常のオフィスと同じで、敷金や賃料もかかりますが、自社オフィスよりもややコストが抑えられます。

 

デジタル技術による業務効率化やリモートワークの導入は、初期費用がかかりますが、長期的に見れば月々の出費を抑えられる有効な手段です。さらに従業員のスキルアップと離職率低下のための施策を打ち出せば、採用コストが軽減できます。

 

人材紹介業を成功させるためのポイント

ノートパソコンや資料を手に持ち笑顔で商談を行うビジネスパーソン

人材紹介業が増加傾向にある現在、新規参入事業者が早期に利益を上げるのはなかなか難しいです。収益化できるまでの自己資金もある程度必要でしょう。ここでは人材紹介業を成功させるためのポイントをご紹介します。

 

ターゲット層(求職者)の明確化

顧客となる求職者の獲得を優先するあまり、あらゆる属性の人を集めても企業が提示する条件に合う人材がいなければ、収益化はできません。企業が欲する人材を集めてこそビジネスが成り立ちます。

 

業種や職種、経験、スキルに特化した求職者を集めるのもひとつの戦略です。市場調査や検証をしながら、どういった人材を集めるのかを明確にしましょう。例えば「人材紹介業界で働く女性で転職を考えている人」など具体的なターゲットを明確にすれば、効果的、かつ効率的なアプローチが可能です。

 

オウンドメディアやSNS、スカウトメールなどもターゲットに響く内容にすれば、やみくもに人を集めるよりも集客しやすくなるでしょう。すぐには結果が出なくても、スタート時点で効率的な集客を意識したほうがコストも抑えられます。

 

競合他社との差別化

現在、人材紹介業界は大手企業が売上のほとんどを占めている状態です。規模や集客力、ブランド力も違うスタートアップ企業が大手に対抗するためには、他社との差別化が必須といえます。革新的なマーケティング戦略や自社だけの手厚い支援策など、事業開始から間もない企業だからこそできるサービスを提供するのもよいでしょう。

 

求職者の多くは将来のキャリアや「よい条件の仕事が見つかるか」などの不安を抱えています。求職者の面談ではそうした不安を和らげ、丁寧なキャリア支援ができるように心がけるとよいでしょう。

 

インセンティブ制度の導入

インセンティブ制度や成功報酬型の導入は、営業職やキャリアアドバイザーにとってパフォーマンス向上の要因になり、事業の成果につながります。成功体験が報酬に直結することで、やりがいや帰属意識も高まるでしょう。離職率も低下して順調に事業を継続できます。

 

ただし、ノルマなどはかえってモチベ-ション低下やストレス要因になることがあります。現場の意見を聞きながら慎重に、どのような形のインセンティブ制度が適しているのか、検討しましょう。

 

人材育成に力を入れる

人材育成は事業を成功させるための重要な要素です。育成スピードも考慮して、社員教育、研修などを実施し即戦力になる人材を育てましょう。求職者や企業が「また担当してほしい」と思える人材を育成することが大切です。

 

また離職率に目を向けることも重要です。

 

・上司が定期的に面談をして不安や悩みを聞く

・業務を効率化して残業時間を減らす

・評価制度・表彰制度などによって意欲をアップさせる

・充実した福利厚生

 

有能な人材が何らかの原因で退職してしまわないよう、日常的にケアやヒアリングを行いましょう。

 

人材紹介業の免許取得には費用も時間もかかる! 早めの準備を心がけて

人材紹介業は現在、注目されている業種のひとつですが、免許取得には費用はもちろん、時間もかかるため、簡単にはできません。できれば専門家の力を借りて早めの準備を心がけましょう。申請の準備と並行して人材紹介業の収益化の仕組みを学び、集客方法や戦略などを考えておくと効率的です。採用に関しては人材業界に精通した有能な人材を採用するのが理想的です。

 

 

この記事の監修者

長沢 ひなた

外資系アパレルで販売・チーム運営を経験後、美容クリニックのカウンセラーに転身。60名中3名のみのトップカウンセラーとして表彰され、マネージャーとして大規模なチームマネジメントも経験する。


「人生単位での変化」を支援したいとの想いからキャリアアドバイザー職へ転身し、入社半年での異例の昇格、1年でリーダーに就任。現在は、キャリアアドバイザー職への転職を専門に、業界構造を熟知した的確な支援を行っている。▶︎詳しく見る

おすすめ求人を提案してもらう (無料・30秒で完了)

キャリアアドバイザーAgent求人ナビはキャリアアドバイザーに特化した転職エージェントです。
キャリアアドバイザーへの転職に精通したエージェントによる、ハイクオリティかつ親身なご支援をお約束いたします。

まずは会員登録いただき、キャリアアドバイザー経験を活かしたキャリアアップや未経験からのキャリアチェンジなどお気軽にご相談ください。

Copyright© キャリアアドバイザーAgent求人ナビ All Rights Reserved.

ページトップに戻る