2025年10月20日公開
最終更新日:2025年10月20日
投稿者:キャリアアドバイザーAgent求人ナビ編集部

人材紹介における返金トラブルと対処法|主な事例や予防策、返金規定についても詳しく解説

人材紹介会社と求人企業との間で発生しやすいトラブルの一つに、「紹介手数料の返金トラブル」があります。返金トラブルを未然に防ぐためには、返金規定を明確に定め、事前にしっかり説明を行うことが重要です。

 

この記事では、人材紹介サービスにおける返金トラブルについて詳しく解説します。具体的なトラブル事例や対処法、返金規定の仕組みなども説明しますので、ぜひ参考にしてください。

 

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人材紹介サービスの仕組みはじめに、人材紹介サービスの仕組みを整理しておきましょう。

 

人材紹介サービスとは、「人材を採用したい企業」と「転職を希望する求職者」を仲介し、雇用関係が成立するよう支援するサービスです。

 

人材紹介会社では求人企業に対して、以下のような流れで人材紹介サービスの提供を行っています。

 

1. 企業から人材採用の依頼を受ける

2. 条件に一致する候補者を企業に紹介する

 (書類選考・面接の実施)

3. 企業が内定を出す

4. 候補者が内定を承諾する

5. 候補者が企業に入社する

 

多くの人材紹介会社では、採用が成立した時点で手数料が発生する「成功報酬型」の料金形態を採用しています。紹介した人材が入社したタイミングで、企業に手数料の請求を行うことが一般的です。

 

つまり、上のフローでいうと1~4の段階では一切報酬が発生せず、5の入社が確認できた時点で初めて収益を得られることになります。

 

人材紹介で発生する手数料は、「紹介手数料」や「紹介料」とも呼ばれ、人材紹介会社の運営は企業から支払われる手数料によって成り立っています。

 

人材紹介の手数料の相場は?

求人企業が人材紹介会社に支払う手数料は、採用した人材の理論年収の30~35%程度が相場とされています。採用が難しい職種やポジションに関しては、35%を超える高い手数料が設定されるケースもあります。

 

なお、理論年収とは、企業で1年間就労した場合に得られる推定年収を指します。理論年収には、12ヵ月分の給与やボーナスなどが含まれます。

 

例えば、「紹介手数料は理論年収の30%」という契約内容で、年収400万円の人材を採用すると、企業は人材紹介会社に対して120万円の手数料を支払う必要があります。

 

人材紹介における返金規定とは?

書類にサインするビジネスマンの手元

返金規定とは、紹介した人材が短期間で退職してしまった場合に、企業へ紹介手数料の一部または全額を返還することを定めた規約です。どのような場合に返金が適用されるのか、その条件が具体的に定められています。

 

通常、紹介手数料の返還は、入社した人材の自己都合による退職を対象とします。「入社後30日以内の退職は紹介手数料の80%を返還」など、在籍期間に応じて返金額が変動します。

 

人材紹介の返金の保証期間

返金規定は人材紹介会社ごとに異なりますが、返金の保証期間に関しては、入社後3ヵ月(90日)以内が一般的です。中には、入社後6ヵ月(180日)以内など、長期の保証期間を設定している人材紹介会社も存在します。

 

なお、医療・介護・保育の分野で人材紹介を行う事業者は、2024年度の法改正以降、就職後6ヵ月以内の離職に対して返戻金制度を設けることが義務付けられています。

 

参考:「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の認定基準見直しについて|厚生労働省

 

人材紹介の返金額の相場

早期退職が発生した場合の返金額は、入社から退社までの在籍期間に応じて段階的に設定されます。

 

返金額の相場は以下の通りです。

 

在籍期間

返還される紹介手数料の割合

入社後1ヵ月(30日)以内

80%

入社後3ヵ月(90日)以内

50%

入社後6ヵ月(180日)以内

10~30%

 

人材紹介会社によっては、入社後1ヵ月から6ヵ月まで月単位で返金率を設定するなど、より細かく返金額を定めていることもあります。

 

 

また、求人企業が安心して採用活動を行えるよう、「入社1ヵ月未満の早期退職には紹介手数料を全額返金する」といった保証付きのサービスを提供する人材紹介会社も存在します。

 

返金が発生する事例とよくあるトラブル

虫眼鏡の中にビジネスマンのアイコン

ここからは、人材紹介サービスの返金トラブルについて解説していきます。

 

まずは、紹介手数料の返金が発生する具体的な事例と、その際に起こりがちなトラブルから見ていきましょう。

 

トラブル事例1. 入社後の早期退職

最も多いのが、企業に紹介した人材が入社後すぐに辞めてしまうケースです。自己都合による早期退職は、手数料返還の対象となります。

 

具体的には、以下のような退職理由が該当します。

 

・想定していた業務内容と実務にギャップがあった

・仕事や職場環境が自分には合わない

・人間関係に馴染めない、苦手な人がいる

・給与が業務量に見合っていないと感じた

 

一方で、同じ早期退職でも返金を実施すべきか判断が難しいケースも存在します。特にトラブルになりやすいのが、「入社前に提示された労働条件と大きな相違があった」という退職理由です。

 

例えば、「残業はないと聞いていたのに、日常的に残業があった」「採用時に提示されたポジションではなく、他の業務に配属された」などです。このような場合は、求人票の内容や企業へのヒアリング記録をもとに、退職理由の正当性と返金対応を検討することになります。

 

仮に、求人票に「残業・休日出勤なし」と明記されていたにも関わらず、過度な時間外労働が常態化していたのであれば、退職に至った原因は企業側にあるといえます。自己都合退職には該当しないため、人材紹介会社は手数料返還を拒否できますが、企業側がこの判断に異議を唱え、トラブルになることがあります。

 

トラブル事例2. 採用条件とのミスマッチ

入社後に、紹介した人材のスキル不足や適性の不一致が発覚し、企業側から返金を求められるトラブルがあります。「即戦力として採用したのに、十分なスキルがなく仕事を任せられない」「営業職にも関わらず、コミュニケーション能力が極端に欠如している」といったケースです。

 

高額な紹介手数料を支払って得た人材が全く戦力にならなければ、企業は当然、返金や人材の再紹介を要求するでしょう。

 

入社後のミスマッチによる返金対応は、非常に判断が難しく、人材紹介会社側は頭を悩ませることになります。なぜなら、ミスマッチの判断には、個人の主観や期待値、企業側の受け入れ態勢など多くの要因が複雑に絡み合い、一概には定義できないからです。

 

「ノルマ達成を優先するあまり、不適切な人材を紹介してしまった」など、人材紹介会社側に明らかな落ち度がある場合は別ですが、基本的には、人材紹介会社と企業とで話し合いを行い、両者が納得する落とし所を見つけて解決を図ることになります。

 

トラブル事例3. 経歴詐称の発覚

入社後に経歴詐称が発覚した場合、企業側から手数料の返還を求められる可能性があります。

 

経歴詐称にあたる行為は以下の通りです。

 

・実際には在籍していない会社に在籍していたと偽る

・無職期間を隠すために前職の在籍期間を水増しする

・職務経歴や役職を捏造する

・履歴書に取得していない資格や免許を記載する

 

単純な誤記や認識違いであれば問題視されないケースが多いですが、意図的な経歴詐称は許されない行為です。もし、その人物の著しい能力不足によって、業務に重大な支障をきたす事態になれば、大きな問題へと発展します。

 

経歴詐称が発覚した際の返金措置については、人材紹介会社と企業間で事前に交わされた契約書上の取り決め(返金規定)が判断基準となります。仮に、人材紹介会社側に返金義務がなかったとしても、企業との良好な関係を維持するために、特別な対応を検討するケースも見受けられます。

 

人材紹介でトラブルが発生した際の返金について

電卓とペンと書類

早期退職など、人材に関するトラブルが発生した場合、人材紹介会社は返金規定に基づいて紹介手数料を返還します。返金規定には、返金の適用条件や返金額の算出方法、免責事由などが定められています。

 

返金の必要性を判断する上で、最も重要なポイントとなるのが「トラブルの責任の所在」です。通常、返金は紹介した人材に何らかの問題があった場合に適用されるため、トラブルの原因が人材と企業のどちら側にあるのかを、正確に見極める必要があります。

 

例えば、紹介した人材が短期間で離職してしまった場合、自己都合による退職であれば、企業側には何の落ち度もないため、返金の対象となります。

 

一方、労働条件の大幅な相違やハラスメントなど、退職に至った要因が企業側にある場合は、返金を行わない、あるいは手数料の一部を返還するといった対応が取られることになります。

 

返金の必要性について人材紹介会社と企業が揉めるケースも

ノートパソコンの画面をのぞき込む二人のビジネスマン

返金規定を明確に定めていても、返金トラブルを完全に防ぐことは困難です。

 

例えば、紹介した人材の退職理由が上司によるハラスメントであったとしても、企業側がその事実を認めず、手数料の返還を求めるケースがあります。ハラスメントの立証は証拠がなければ難しく、企業側が「指導はしたが、叱責するようなことは一切なかった」と主張すれば、人材紹介会社は手数料の返還に応じざるを得ません。

 

返金規定で「ハラスメントなど企業側の過失による退職時は返金を行わない」と定めていても、事実の証明が困難な場合には、実質的に無効となってしまいます。

 

手数料の返還を巡って、人材紹介会社と企業の間で見解の相違や意見の食い違いが生じることはよくあります。返金規定はこのようなトラブルを防ぐために存在しますが、ここで紹介した事例のように、必ずしもその役割を果たすわけではありません。

 

企業との話し合いや交渉がスムーズに進まず、トラブルが長期化する場合は、最終的に弁護士の力を借りて解決を目指すことになります。

 

人材紹介の返金トラブルを防ぐには?

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人材紹介の返金トラブルを防ぐための主な対策を3つ紹介します。

 

返金規定を明確に定める

トラブルを避けるためには、返金が適用される条件を明確かつ詳細に定めることが肝心です。

 

返金規定には以下の項目が必須となります。

 

・返金の適用条件(返金対象となる条件や保証期間など)

・返金額の割合(返金される紹介手数料の割合)

・免責事由(返金の対象外となるケース)

 

返金規定では、「入社日から起算して〇ヵ月以内の退職:紹介手数料の〇%返金」といった形式で返金対応について明記します。

 

また、免責事由の設定も欠かせません。多くの人材紹介サービスでは、入社後の労働条件や環境に重大な問題があった場合など、企業側の過失による早期退職は返金の対象外としています。

 

返金規定に、返金の具体的な条件や責任の範囲を明記することで、トラブルに発展するリスクを最小限に抑えられます。

 

求人企業と共通認識を持つ

求人企業に対して、人材紹介に関する契約や返金規定について十分に説明を行うことが重要です。ただ文面を読み上げるのではなく、具体例を交えながら説明すると企業側の理解がより深まります。過去の事例をもとに、返金の対象となるケース、ならないケースを提示すると分かりやすいでしょう。

 

返金規定の説明を行う際は、以下のポイントを意識するといいでしょう。

 

・返金対象となる条件(自己都合による退職の具体例など)

・保証期間(〇ヵ月の数え方、具体的に何日か)

・返金の起算日(入社日、あるいは内定承諾日か)

・返金率(期間に応じて何%返金されるか)

・免責事由(企業側の過失の具体例など)

 

丁寧に説明を行い、人材紹介会社と企業との間で認識のズレをなくすことで、無用なトラブルを回避できます。

 

企業側のニーズを正確に把握する

返金トラブルの多くは、紹介した人材の早期退職や入社後のミスマッチが原因です。よって、求人企業の採用ニーズを正確に把握し、適切な人材を紹介することが、トラブルを未然に防ぐ最善策となります。

 

求職者に仕事を紹介する際は、企業の良い面だけでなく、残業時間や異動の可能性など、ネガティブに感じられる情報も隠さずに共有することが大切です。実情を把握しておけば、入社後にギャップを感じることが少ないため、早期の離職を避けられます。

 

人材紹介サービスで起こりやすい問題は他にも

ノートパソコンの前で悩む若いビジネスマン

人材紹介の現場では、紹介手数料の返還を巡って人材紹介会社と求人企業が揉める以外にも、様々なトラブルが発生します。その中でも、企業による中抜きや紹介手数料の未払いは、人材紹介会社の収益に影響を及ぼす深刻なトラブルです。

 

人材紹介における中抜きとは、人材紹介会社を介さずに企業が人材を採用し、紹介手数料の支払いを免れる行為を指します。中抜きが横行すれば、人材紹介会社は成功報酬として受け取るはずだった紹介手数料が得られず、売上が激減してしまいます。

 

中抜きは不正行為であり、契約違反にあたります。発覚した場合、人材紹介会社は企業に対し、違約金の請求や法的措置を検討することになります。

 

人材紹介の返金トラブルは未然に防ぐことが可能

この記事では、人材紹介における返金トラブルの事例や返金規定について解説しました。紹介手数料の返還に関連するトラブルは、返金ルールを明確に定め、サービス利用時の留意点を企業側に伝えることで、ある程度回避できると考えられます。

 

返金の原因となる早期退職や入社後のミスマッチが発生しないよう、担当者個人が企業側の採用ニーズを正確に把握し、適切な人材を紹介することも重要な鍵となります。

 

 

この記事の監修者

長沢 ひなた

外資系アパレルで販売・チーム運営を経験後、美容クリニックのカウンセラーに転身。60名中3名のみのトップカウンセラーとして表彰され、マネージャーとして大規模なチームマネジメントも経験する。


「人生単位での変化」を支援したいとの想いからキャリアアドバイザー職へ転身し、入社半年での異例の昇格、1年でリーダーに就任。現在は、キャリアアドバイザー職への転職を専門に、業界構造を熟知した的確な支援を行っている。▶︎詳しく見る

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