2025年1月26日公開
最終更新日:2025年1月26日
人材業界が2025年現在抱える課題とは? 今後の展望・将来性も解説
終身雇用の崩壊や働き方の変化などによって、企業からの人材ニーズは高い状況が続いています。また求職者の転職先としても人材業界は人気が高く、今後の将来性は高いと言えるでしょう。
このような明るい展望がある一方で、少子高齢化への対応、AI技術による職種ニーズの変化など、人材業界に携わる方が把握しておくべき課題もあります。本記事では、人材業界における課題や今後の展望、人材業界市場の現状などについて紹介します。人材業界への就活や転職を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
人材業界の未来は明るい! 転職者からも人気を集めている理由
さまざまな課題が発生している一方で、人材業界は就活生や転職者からも人気の高い業界です。人材業界が転職市場としても人気を集めている理由や、人材業界の魅力をまずは紹介します。
「個人を尊重する」働き方が浸透
人材業界の将来を左右する要素のひとつに、世間一般の様々な企業において個人重視の働き方が浸透してきているという点があります。従来の終身雇用制が崩壊し、多様な働き方を認める企業も増えています。終身雇用が一般的であった時代においては、労働者はその企業に一生勤めることになるため、人材紹介会社や転職エージェントなどの人材サービスの利用機会は現在ほど多くありませんでした。
また、働き手の労働に対する価値観も大きく変化しました。たとえば家事や育児、介護との両立といったワークライフバランスを重視して、労働者自らが非正規雇用を求めることも珍しくはなくなっています。
今後は雇用の流動性や多様化がますます進むと予測されます。企業側からも求職者からも人材サービスに対する需要の増加が見込まれるでしょう。
働き方が多様化したことで、従来とは異なる、更に新しいニーズを満たせるような人材サービスの需要が生まれることも考えられます。
副業や兼業も当たり前に
従来は禁止であることが多かった副業が、法的に認められるようになりました。労働者は副業を行うことで収入の増加やスキルアップなど多くのメリットを得られます。今後、副業や兼業をする人はさらに当たり前となり、現在よりも働き方そのものが多様化すると予想されます。
働き方の多様化により、人材サービス業界そのものの成長だけでなく、従来とは異なる人材サービスの創出なども期待されます。
労働力不足が続き、企業からの人材業界へのニーズが増大
日本国内では、業種を問わず深刻な人手不足・労働力不足の状態が継続しています。帝国データバンク公表の「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」によると、正社員が不足している企業の割合は全体の51.7%と、高い水準となりました。
人手不足や労働力不足の状態は、すなわち企業の人材需要が高まっている状態です。人材サービスは企業の人材需要を充足することで収入を得ます。今後も人手不足や労働力不足が継続する傾向が続くとみられていることから、人材業界の売上の伸びが予想されるでしょう。
近年人手不足への対策として女性や高齢者、外国人雇用の推進なども行われていますが、それらの対策だけでは働き手不足を完全にまかなうことは難しいとも言われています。今後も労働者の人材需要の高まりが予想されることから、全体的な労働人口が減少しても企業の働き手需要は継続されると考えられるため、人材業界市場のさらなる拡大にも期待が高まります。
※1 出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241113-laborshortage202410/
コロナ禍からの経済回復の影響
2020年に端を発したコロナ禍においては、経済活動の変化により各企業の採用活動や雇用状況も大きく変化しました。アフターコロナを迎え、経済活動も再開し、雇用も回復傾向にあります。企業実務サポートクラブが行った調査(※2)によると、コロナ禍で下落が加速した正社員の有効求人倍率は、経済活動の回復の影響で徐々に上昇しています。
コロナ禍を経て、労働力需要にも変化が出ました。たとえば感染症対策の観点から非対面非接触での業務が求められるようになりました。接客業など一部の対面業務はお掃除ロボット、自動受付ロボット、チャットボットといったITテクノロジーを活用し、非対面に置き換えられています。ITテクノロジーにより業務効率化が進み、人手不足の分野での生産性向上にもつながっていますが、例えば社会福祉や介護、営業(フィールドセールス)といった“人の機敏やぬくもり”が求められる分野をはじめ、すべての分野や業務が非対面非接触の方法に置き換えられるわけではありません。変化した労働力需要への対応のためにも、人材業界のニーズは高まっています。
さらに、コロナ禍によりテレワークや在宅勤務を採用する企業も拡大しました。テレワークを導入することでワークライフバランスの実現や、通勤圏外の遠隔地からも従業員を雇用できるといったメリットがあります。テレワークのしやすい職種や分野を中心に労働力需要が高まっていることから、人材業界は今後も将来性が高いと言えるでしょう。
※2 出典:企業実務サポートクラブ「コロナ禍による人材需要の現状、アフターコロナでの見通し」
https://www.kigyoujitsumu.com/topics_detail31/id=43452
人材業界の主要な業務内容
人材業界の代表的な分野には、以下の4つがあります。
・人材派遣
・人材紹介
・求人広告
・人材コンサルティング
人材業界で働く上では、分野ごとの業務内容を知っておくことが重要です。それぞれの分野ごとのおもな業務内容や特徴を詳しく解説します。
人材派遣
人材派遣とは、人材サービス業者が自社に登録している人材を企業へ派遣する業態です。登録している人材は派遣社員と呼ばれ、人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業へ出向して働きます。
以下のような、一時的な労働不足を補うために人材派遣サービスが提供されています。
・プロジェクト内など短期間の人手不足
・専門的なスキルやノウハウが必要な作業
・繁忙期の労働力確保 など
人材派遣会社に登録している人々も、自分の持っているスキルやキャリア、経験を活用し、幅広い業界や職種で活躍する機会を得られるでしょう。
人材紹介
人材紹介サービスとは、人材を求めている企業と仕事を探している求職者をマッチングさせるための仲介業務のことです。人材紹介会社によってターゲットや特色が異なり、以下のようなさまざまな分野の人材紹介サービスが提供されています。
・新卒の就活生向け
・第二新卒向け
・中途採用向け
・特定分野や職種に特化 など
人材紹介サービスでは、求職者のスキルやキャリアの希望や情報を把握した上で、マッチする企業を紹介します。就職や転職を希望する人は基本的に無料で利用でき、以下のようなサポートも受けられます。
・キャリアコンサルティング
・履歴書や職務経歴書の作成・添削
・面接対策 など
人材を求めるクライアント企業に対しては、会社が求めるスキルや知識、企業文化に適合した採用候補者を探し、効率的に提供するのが役割です。
人材派遣が、派遣会社側で雇用している人を一時的に派遣社員として他の企業に提供するビジネスモデルであるのに対して、人材紹介では、紹介した求職者と企業が直接雇用契約を結ぶという点が大きな違いです。人材紹介では紹介した求職者の採用が決まったら、その人材が紹介先企業の正社員として働きます。
求人広告
求人広告とは、新卒採用や転職市場向けに、企業が募集している役職・ポストや募集要項を広く告知するために利用される広告サービスのことです。以下のような、様々なプラットフォームで求人情報が公開されています。
・雑誌
・新聞
・Web広告
・SNS など
求人広告を通じて企業のビジョンや職場環境、求める人物像などを広くアピールし、適合する人材を募集します。広範囲にわたるターゲットへアプローチを行う手法で、一度に多くの希望者を募れる可能性があり、また広告そのものの効果で企業ブランドの認知度を大きく向上できる可能性も高くなります。
求人広告は、広告を運営・管理する企業やメディアが、広告を掲載する企業からの広告掲載料を得て、収入とするビジネスモデルです。
人材コンサルティング
人材コンサルティングとは、企業内の人事制度や人事戦略の構築や最適化を目的に、コンサルタントが専門知識を提供するサービスです。企業の人的資源管理に関連する、幅広い領域の問題解決のための提案を行います。
・組織のパフォーマンス向上
・人材育成
・採用戦略の提案
・報酬体系の提案
・労働条件の提案
・キャリアパスの開発 など
クライアント企業の持つ具体的なニーズや課題を把握した上で、人材面でのどの対策が適切かをアドバイスします。具体的な解決策として、以下のような施策も実行します。
・組織構造の再編成
・パフォーマンス管理システムの構築
・従業員のモチベーション向上対策 など
日本の人材業界全体の現状
日本の人材業界全体の現状について、順に解説します。
人材業界の2024年~2025年の市場規模
2024〜2025年の人材業界の市場規模は、国内企業の人手不足を背景に人材派遣業界の需要の高まりから拡大傾向が続いています。新型コロナウイルスの影響を受けた2020〜2021年の有効求人倍率は平均が1.2倍を下回ったものの、経済活動の回復から徐々に上昇をみせ、2022年以降は1.2倍以上で推移しています。
人材派遣業界の業績は、おおむね求人倍率の高さに比例しながら向上する傾向にあります。コロナ禍で一時期低迷した需要も、2025年現在ではコロナ禍以前の需要をほぼ取り戻しています。厚生労働省の「労働者派遣事業報告書」(※3)の集計によれば、2024年6月1日時点の派遣労働者の数は約192万人で、前年比3.4%増でした。
※3 出典:厚生労働省「労働者派遣事業の事業報告の集計結果について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079194.html
超高齢化社会を控えて直面する「2025年問題」
2025年問題とは、日本が超高齢化社会となることで直面するとみられている、様々な社会問題のことです。内閣府の「令和4年版高齢社会白書」(※4)では、2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になる一方で、少子化が加速し人口減少が続くという見通しが出されています。
高齢化社会が進行すると労働人口(労働が行える15歳以上の就業者や休業者、完全失業者の合計)が減少します。日本のあらゆる業界や分野で人手不足が深刻化し、人材確保の競争が激化すると考えられるでしょう。
労働人口の減少によって、特に懸念されているのが医療・介護業界の人材不足です。さらに医療費による若年層の社会保険料の負担が増え、日本の医療保険制度崩壊の可能性も指摘されています。
※4 出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/04pdf_index.html
人材業界の今後の展望
2025年問題などを背景に、人材業界の今後に不安を覚える方も多いかもしれません。人材業界の今後の展望について解説します。
労働人口の更なる減少・人材需要の高まり
総務省の資料「令和4年度情報通信白書」(※5)によると、少子高齢化の進行を原因に、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少が続いており、2050年には、2021年比で29.2%減にあたる5,275万人になると予想されています。
若年層の労働人口が減少する状況下においては、各企業は若い労働力だけでなく中高年層や外国人の労働人口も適切に評価しながら、労働力として獲得する工夫が必要です。その需要に応えるための、中高年層や外国人の求職者と企業をマッチングさせて雇用につなげることができる人材業界の役割もますます高まると言えるでしょう。
※5 出典:総務省「特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html
企業雇用のさらなる流動化
オンラインツールの普及や働き方改革の推進を背景に、以下のような多様な働き方の増加、雇用体系の多様化が加速しています。
・テレワーク
・フレックスタイム制
・時差出勤制度
・短時間勤務
・短時間正社員
・副業や兼業
・ジョブ型雇用
・業務委託
働き方や雇用形態の変化は、今後中長期的に見ても拡大傾向が続くとみられます。人材業界には、企業雇用の流動化に合わせた、企業と求職者の双方の需要を充足させる支援が求められるようになるでしょう。
たとえば求職者側からは、多様な働き方が求められます。一方で企業側からは、終身雇用制度の廃止にともない新しい雇用形態が注目されています。人材業界は、求職者と企業側のニーズを徹底して把握することで、適切なマッチングによる雇用機会の確かな創出が求められています。
AI導入によって需要が減る職種も
AI技術が進歩したことで、今後は多くの仕事がAIに置き換えられるとの予想もあります。特に以下のような仕事や職種は、AI導入により需要が減る可能性が高いと言われています。
・データ入力業務などの事務職
・単純作業 など
人材紹介や派遣で求められる業務はAIでは不可能な業務に限定されていくことも予測されます。
福祉やサービス業など、「人間だからこそできる」仕事は需要増大
AI導入で需要が減る職種がある一方で、以下のような人手不足に悩まされている一部の職種、業種の需要は高まる可能性があります。
・福祉
・教育
・医療
・サービス業
少子高齢化の影響を受けて、人間だからこそできる仕事の需要は今後も増えるとみられます。特に求人倍率が改善されると人材派遣業界の需要も高くなるため、人手不足が続く分野の人材需要はますます高くなると予想できるでしょう。
人材業界における【短期的な課題】
人材業界を取り巻く環境は近年大きく変化しています。人材業界の現在や今後数年後での発生が予想される、短期的な課題について解説します。
雇用形態の変化への理解・対応
コロナ禍では、正社員の有効求人倍率が急落しました。その後コロナ禍前の水準までおおむね回復しているものの、正社員の需要については不透明です。非正規雇用の人材派遣業の需要が大きく伸びたことを受けて、人材業界では今後雇用形態の需要の変化への理解や、対応が求められます。
同一労働同一賃金への理解・対応
派遣社員と派遣元社員との待遇差是正や差別的な取り扱いの禁止を目的として、令和2年4月より、「派遣元事業主には、派遣先均等・均衡方式(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇)または労使協定方式(一定の要件を満たす労使協定による待遇)のいずれかを確保すること」が義務付けられるという内容の、同一労働同一賃金の法改正が行われました。
同一労働同一賃金の法改正によって、派遣社員の賃金格差が是正され、雇用維持の動きが大きくなりました。人材派遣市場の拡大にもつながっている一方で、人材業界にも同一労働同一賃金への確かな理解や対応が求められています。
進むDX化への対応
国外を含めた競争力の維持のために、DXによる組織改革やビジネスモデル変革の取り組みが幅広い分野で求められています。人材業界でも、DX化が多くの業種に影響を与える最重要な取り組みのひとつとされています。
人材業界の中でも特に人材派遣業は、以下のようなポイントからDXによる問題解決が図りやすく、今後DX推進が加速していくでしょう。
・派遣先、派遣スタッフ、派遣会社の三者間での情報の共有や、即時的な連携の必要性が非常に高い
・ペーパーレス化できる業務がそもそも多い
・勤怠管理や給与前払い等をデジタルによってリアルタイム処理できる
DXは業務の効率化やコスト削減による競争力向上につながる一方で、DXに着手できない人材業界の企業も、まだまだ多いとみられています。DXが推進できない企業は競争力や優位性を保てなくなる危険性があり、人材業界における今後のDXの展開は必須と言えるでしょう。
テレワークへの対応
コロナ禍を経て、テレワークでの働き方も広く浸透しました。今後もテレワークを継続し、また導入拡大する企業が増えると予想されているため、求職者との面談をオンラインにするなど、人材業界でもリモートワークへの対応が求められます。リモートは求職者が時間や場所を選ばず面談できるというメリットがある一方、意図のすれ違いや誤解を避けるために、対面よりも丁寧なコミュニケーションが求められるというデメリットもあります。人材業界では、メリットやデメリットも踏まえたうえでのリモートへの適切な対応が必須です。
有効求人倍率の回復
コロナ禍により低下した有効求人倍率の回復をみせ、多くの企業で人手不足が懸念されています。特にコロナ禍以前と比較して、以下のような分野では人手不足が続いています。
・建設業
・運送業
・医療、福祉分野
さらに、旅行や飲食、小売などのコロナ禍で有効求人倍率が大きく低下した業種も人材需要が伸びています。人材業界では、各分野における人手不足の状況への対応が求められています。
企業と人材との、マッチング精度の向上
テレワークの浸透による、転職者の増加も予測されています。一方で働き方やライフスタイルに対する価値観が企業と求職者で異なるケースもみられ、人材業界では両方のニーズを充足させるマッチングが難しくなっています。双方のニーズの調整や比較、充足が実現できる仕組みの構築やサービスの提供が、人材業界には求められるでしょう。
人材業界における【中長期的な課題】
人材業界における、中長期的に発生する課題を順に解説します。
企業の海外進出に合わせたグローバル人材の育成
国内での市場の飽和や人口減少の影響により、各企業の海外進出が進んでいます。企業の海外進出にともない、グローバル人材の需要も高まっています。
人材業界では、海外需要に対応できるグローバル志向の強い求職者を集める取り組みを検討しなければいけません。グローバル人材の育成に注力するために、世界での市場拡大で必要になる語学力や交渉力を身に付けてもらうための、研修や学習サービスの提供といった対応も求められます。
AI技術の躍進にあわせた需要増減への理解
IT技術の進歩により、AI技術を活かした業務を展開する企業も多くなりました。AIの導入が進んだことにより、AI活用で簡略化される業種や職種の人材需要が低くなり、一方でAIに代替されない専門的な職種の需要が高くなることが予測されます。AI技術の進歩状況も含め、その影響による職種や業種の需要増減を理解し、人材業界の企業は自社の将来的な方向性を検討することが必要になるでしょう。
労働力人口減少への対処
少子高齢化の影響により、将来の労働人口減少が予測されています。各企業には減少する若年層の労働力をカバーするために、中高年層や外国人の雇用体制を整えることが求められています。人材業界では、若い労働力の減少を想定した上で、各企業で求められている人材やスキルを把握する必要があるでしょう。
高齢者の就労への対処
今後は老後資金計画を踏まえて、定年後も仕事をして収入を得たい高齢者層の増加が予想されます。企業は、高齢者層の労働力の活用方法や、採用基準の検討が求められるでしょう。
人材業界では、高齢者のスキルや経験を評価できるシステムの構築や、働きやすい環境整備、具体的な仕事への活用方法を記載したマニュアル整備といった準備が必要です。
景気に影響されやすい業界特性への理解
人材業界は景気の影響を受けやすいという特性があります。景気が良ければ売上が伸び、景気が下向きになると売上が下がる傾向にあるため、中長期的に安定して経営を行うのが難しいとも言われる業種です。人口減少により景気が悪化すると人材業界の需要も減るため、業界特性を理解した上での経営が各企業に求められています。
人材業界のトレンドを知っておこう
人材業界への就職・転職を検討する際、課題とは別に業界のトレンドを把握しておくことも重要です。人材業界の現在や今後におけるトレンドをいくつかピックアップして解説します。
M&Aによる事業拡大が活発化
人材派遣業界では、事業規模拡大や自社にないリソース獲得を目的に、M&A(企業の合併・買収)が活発化しています。事業規模の拡大により、人材教育を中心とした投資も可能となることから、中小規模の人材業界企業にとってM&Aは有効な戦略と言えるでしょう。
異業種間でのM&Aも双方に大きなメリットがあります。今後人材派遣業界に参入する大手企業が人材派遣会社を買収すれば、派遣先企業の開拓や派遣スタッフの獲得の手間やコストを削減しつつ、実績やノウハウを獲得できるというメリットが得られます。事業拡大だけでなく、異業種への経営の多角化も実現できるでしょう。
事業の多角化による生き残り戦略
人材業界は利益率が低く景気動向の影響を受けやすいという性質があります。そこで、人材派遣業のノウハウを活かし、多角的な事業展開を行うことが安定的な事業継続に有効な場合もあります。特に、高齢者向けビジネスなどの少子高齢化社会でも需要が高く、将来性がある業種への事業多角化が実現すれば、利益率の改善が見込まれるでしょう。
外国人労働者の雇用増大もカギに
多くの企業でグローバル化の推進や人手不足解消を目的として、外国人労働者の採用が増加傾向にあります。人材業界でもグローバルな人材を確保するため、日本人だけでなく外国人の採用を積極的におこなうことが重要です。
外国人の雇用を実現するためには、以下の業務や作業を行う体制の構築が必要です。
・在留資格の申請や確認などの手続き
・法律の知識の取得
・国人労働者の就労に関する制度の理解
・就労ビザ取得のサポート体制
・日本語力のチェック
・適性検査 など
求人企業にとっては人材派遣を利用することで、直接外国人を雇用するよりも手間やコストを省けるメリットがあります。そのため一定のニーズがあり、人材事業の安定した経営のために、外国人の確保や採用を検討する人材企業も増加しています。
「AI」と「HRtech」の普及にあわせた人材育成
HRtechとは、「Human Resources=人事・人材」と「Technology=技術」を掛け合わせた造語です。具体的には以下のような人事・人材業務を改善するシステムやソフトウェア、クラウドサービスを指します。
・採用管理
・勤怠管理
・給与計算
・人事評価 など
AIやHRtechは、人事コストの削減や人材の確保、人材育成に活用されています。AIやHRtechクラウド市場規模は今後も拡大傾向と予想され、人材業界にも大きな影響を与える可能性があります。
人材業界が抱える課題を正しく理解しておこう
本記事では人材業界の将来性や課題、今後の動向やトレンドなどについてまとめて解説しました。人材業界を取り巻く環境が大きく変化していく流れを受けて、新たな課題も発生しています。
現在や今後における雇用や採用のニーズを踏まえて、課題解決への対策を行うことが、人材業界の経営者や、働く人々に求められています。
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