2025年1月25日公開
最終更新日:2026年7月17日
投稿者:キャリアアドバイザーAgent編集部

人材紹介業に携わる人が知っておくべき「返金規定」とは? 最新の「6ヶ月以内離職」規定についても詳しく解説

人材紹介会社は、求人企業と求職者をマッチングし、採用が実現した場合に企業から紹介手数料を成果報酬として受け取ります。人材紹介ビジネスを理解するにあたっては、6ヶ月以内離職をはじめとした、返金規定についても知っておくことが重要です。

 

本記事では、人材紹介会社の利用や活用を検討している方、人材業界への転職を考えている方、すでに活躍されている方へ向けて、返金規定の基礎知識を解説します。

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人材紹介会社が利益を得る仕組み

求職者は基本的に人材紹介会社のサービスを無料で利用できます。人材紹介会社は、クライアント企業から得る紹介手数料から利益を得ているためです。人材紹介会社が利益を得るビジネスモデルや方法について解説します。

 

人材紹介は求人企業と求職者をマッチングするビジネス

人材紹介とは、人材を求める企業からの依頼を受け、登録している人材から希望や条件に合う求職者を紹介するマッチングサービスです。人材紹介業は企業と求職者の間に入り、企業と求職者がマッチングされるまでの様々なフォローまで実現する、コンサルタントとしての役割も提供しています。

 

人材紹介業を通じて採用が決定した後は、求職者と企業が直接雇用契約を結びます。ただし、企業が求める人材が登録者の中にいない場合は紹介ができず、クライアント企業からの依頼への対応ができません。そのため、平時からいかに幅広いジャンルにおける、スキルの高い求職者を多く集められているかが、人材紹介業成功のポイントと言えるでしょう。

 

マッチング成立(人材が入社)時に得られる手数料が人材紹介会社の利益に

人材紹介業を通じてマッチングが成立すると、クライアント企業から人材紹介会社へ紹介手数料が支払われます。一部のケースを除き、人材紹介業の手数料は成功報酬型を採用しているため、求職者が実際に企業に採用された場合にのみ発生します。求職者側は人材紹介業のサービスを基本的に無料で活用できるため、クライアント企業からの紹介手数料が、人材紹介会社の利益となります。

 

紹介手数料は、職業安定法により上限制手数料と届出制手数料の2種類に定められています(※1)。上限制手数料は、採用後実際に支払われた賃金の10.8%(免税事業者は10.3%)を上限に支払われる手数料のことです。

 

届出制手数料は、求職者が得られる理論年収から割り出す手数料で、ほとんどの人材紹介業が採用している手数料の制度です。相場は理想年収の30〜35%程度の料率ですが、職種や求職者の年齢などによって料率は異なります。

 

理論年収は「毎月の給与×12ヶ月+賞与」で算出できます。たとえば毎月の給与が30万、賞与が120万の求職者でマッチング成功した場合の理論年収は、30×12+120=480万円です。料率が30〜35%の場合の紹介手数料は、480万×0.3〜0.35=144万〜168万円となり、紹介手数料として支払われた144〜168万円が、人材紹介業の利益となります。

 

※1 出典:厚生労働省「制度の概要 |手数料」

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/syoukai/dl/06.pdf

 

小さいコストで運営できるのが人材紹介業のメリット

人材紹介業を運営する費用として、おもに以下のランニングコストが発生します。

・光熱費

・通信費

・広告費

・オフィスが賃貸物件であれば賃貸料

・従業員を雇うのであれば人件費

・その他 

 

ただし人材紹介業は物品の取り扱いがありません。製造業や小売のように仕入れや商品を保管する倉庫費や管理費などのランニングコストが発生しない分、小さいコストで運営できるのがメリットです。

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企業へ人材を紹介し入社までいったとしても、早期退職が発生する可能性がある

頭を抱える女性

人材紹介会社は、求人企業のニーズや要望と、求職者の適性やニーズなどを慎重に踏まえることを前提に、マッチングを行っています。とは言え、無事に紹介した人材の採用が決まり入社まで至ったとしても、様々な理由からどうしても、一部で早期退職が発生してしまう可能性があります。

 

早期退職は様々なケースで発生します。早期退職が発生するそれぞれのケースとともに、人材紹介会社側で行える事前対策方法を解説します。

 

企業と人材のミスマッチによる早期退職

早期退職の理由としてもっとも多いのが、企業と人材のミスマッチです。「マイナビキャリアリサーチLab」が実施し公表している2024年7月の調査(※2)によると、早期退職の理由としてもっとも多く上がっていたのが以下の4つでした。

・職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった(44.4%)

・上司/同僚などの職場の人間関係が合わなかった(33.4%)

・想定していた仕事内容ではなかった(28.5%)

・やりがいを感じられなかった(28.0%)

 

いずれの理由も、職場の環境、雰囲気、人間関係などとのミスマッチと、入社前に自分が想定していた仕事内容と、入社後の実際の仕事内容とのミスマッチが原因と考えられます。求職者が選考の流れの中で得たイメージと、実際に働いたときに経験したものの間でギャップが発生することが、早期離職につながっているのです。

 

人材紹介会社では、紹介した人材が早期退職した場合に返還金を支払うといった返金規定を設けているところも多くあります。ミスマッチによる早期退職は採用者の自己都合退職に該当するため、紹介先の企業に過失はありません。人材紹介会社は返金規定に沿って返還金の対応を行うとともに、企業と人材のミスマッチを防ぐための対策を行う必要があります。

 

企業と人材とのミスマッチを防ぐための具体的な対策方法には、以下が挙げられます。

・最終マッチング前の求職者とキャリアコンサルタントの面談回数を増加させる

・キャリアコンサルタントが紹介先企業の働き方や企業文化に対する理解を深めておく

・求職者に紹介先企業の情報を伝える際、デメリットやマイナスの情報も提供する

 

※2 出典:マイナビキャリアリサーチLab「早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介」

https://career-research.mynavi.jp/column/20240702_81747/

 

本人の心身の問題による早期退職

採用された人材本人の心身の問題による早期退職もあります。前出のマイナビキャリアリサーチLabの調査では、以下のような早期退職理由もみられます。

・想定よりも仕事がきつかった(22.9%)

・想定よりも仕事量が多かった(17.7%)

 

仕事の内容や量が想定よりも多かったのがイメージのギャップによるミスマッチではなく、本人の持っている疾患や心身の状態が原因で仕事がこなせなかった場合には、これらは本人の心身の問題ともなります。

 

本人の心身の問題による早期退職が発生した場合には、例えば人材紹介会社が紹介した人材の業務遂行能力にもともとミスマッチがあったと捉えられてしまったり、業務が遂行できないことを予見できていたにもかかわらず、職業の斡旋を行ったとみなされたり、ということもありえます。明らかに紹介人材の心身の問題を把握したうえで紹介を行っていた場合、紹介金の返金対応だけでなく、紹介先企業への損害賠償責任が別に生じてしまうというリスクもゼロではないという点に、注意が必要です。

 

万が一本人の心身の問題が原因で早期離職が発生した場合、以下のような対応が推奨されます。

・産業医に病状に関する判断を仰ぐ

・契約書に沿った返金対応を進める

・返金対応以上の補償が必要な場合、紹介先企業と別途やり取りを進める

 

本人の心身の問題による早期離職は非常にセンシティブな問題です。紹介先企業への適切な対応はもちろん、紹介者本人の情報保護などの面でも慎重に対応するようにしましょう。

 

入社先企業の過失による早期退職

入社先企業の過失によって早期退職につながる場合もあります。たとえば、以下のようなケースです。

・紹介先企業の担当者からパワハラを受けた

・紹介先企業で十分な休憩時間を与えられず食事もできなかった

・紹介先企業でサービス残業や休日出勤を強要された など

 

紹介先企業の明らかな過失によって早期退職が発生した場合、人材紹介会社は返金に応じる必要がある場合とない場合があります。まずは返金規定の記載内容や文言をしっかりと確認しましょう。

 

たとえば退職勧奨に相当するような、紹介先企業の担当者によるパワハラが原因で早期退職した場合、自己都合による退職には該当しない場合があります。人材紹介会社の顧問弁護士や法務部に相談し、判断を仰ぎつつ慎重に対応することがおすすめです。

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人材紹介会社が求人企業と契約を結ぶ際に設定する返金規定とは

契約の様子

人材紹介会社を通じて採用が決定すると、クライアント企業側は紹介手数料を支払う必要があります。ところが、紹介手数料を支払って人材紹介会社経由で人材を確保したとしても、早期に退職されてしまったのでは手数料分のコストが無駄になってしまいます。確保予定だった人材が退職してしまうことで、さらに自社の業務上でも問題が生じてしまうでしょう。

 

そのため、職業安定法では人材紹介会社側での返金規定に関する明示が義務付けられています。職業安定法における人材紹介業の返金規定との関係や考え方について解説します。

 

職業安定法で義務付けられている「返戻金制度に関する明示」

職業安定法上では、人材紹介会社側が設けている返金規定や返金制度を「返戻金制度」と規定しています。さらに、職業安定法「4 職業紹介による就職者の早期離職防止のために遵守すべき事項」(※3)では「職業紹介事業者は、同条の規定に基づき、返戻金制度に関する事項について、求人者及び求職者に対し、明示しなければなりません」と、返戻金制度の情報提供と明示を義務付けられています。

 

人材紹介会社が返戻金制度を明示すべき場所は、以下の通りです。

・人材紹介契約書

・人材サービス総合サイト(厚生労働省運営)

・自社の事業所内またはホームページ内

 

クライアント企業と人材紹介会社の間で結ぶ契約内容が明示された人材紹介契約書の中で、返戻金制度について明示しなければいけません。返戻金についての規定を明示することで、利用事業者との認識違いや、契約後のトラブル防止にもつながります。

 

厚生労働省の「人材サービス総合サイト」にも、返戻金制度導入の有無と、具体的な内容を明示する必要があります。人材サービス総合サイトでは、参考資料となるPDFまたは自社ウェブサイトのURLを登録することで情報提供を行います。

 

なお、返戻金制度の導入や変更などが生じた場合は、人材サービス総合サイトの情報もすみやかに更新しなければいけません。

 

返戻金制度を自社で掲示する場合、かつては自社の事業所内の書面掲示のみが認められていました。2024年4月の職業安定法の改定により、自社のホームページ内での掲示も可能になりました。

 

自社のホームページ内で返戻金について掲示する場合には、人材紹介サービスを利用するクライアント企業の目に留まりやすい、分かりやすい場所への明示が推奨されています。以下のような、利用事業者が閲覧する可能性の高い場所に提示しましょう。

・トップページ

・利用規約を確認できるページ

・手数料や返金規定を設けた別ページ

 

事業所内において返戻金制度について掲示する際、内容が細分化されている、条件が多岐にわたる等の場合には、事業所を訪問したクライアント企業や求職者を含め、誰でも閲覧できる状況にした上で、別冊にて記載することも認められています。

 

※3 出典:厚生労働省「職業紹介事業の運営」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000180131_2.pdf

 

義務付けられているのはあくまで「返戻金制度の有無の明示」

職業安定法では返戻金制度の情報提供と明示は義務付けているものの、制度を設けること自体は義務付けられていないことを覚えておきましょう。職業安定法「4 職業紹介による就職者の早期離職防止のために遵守すべき事項」では、「有料職業紹介事業者は、返戻金制度(則第 24 条の5第1項第2号に規定する返戻金制度をいう。)を設けることが望ましいこととされています」としているものの、義務化はされていません。

 

人材紹介会社は返戻金制度を設定しなくても問題ない?

職業安定法上を含め法的に返戻金制度の設定は義務付けられていないため、人材紹介業が返戻近制度を設定しないことは、法律的には問題ありません(後述する有料職業紹介事業者認定時の特定分野のケースを除きます)。

 

ただし、人材紹介業の利用を検討するクライアント企業側から見れば、早期退職・離職のリスクを考えると、返戻金制度や返金規定を導入し、内容を明示している企業の方が利用の選択肢に入りやすいといえるでしょう。

 

返金の代わりに「フリーリプレイスメント」を設定する人材紹介会社もある

人材紹介会社の中には、早期離職への対応として返金の代わりにフリーリプレイスメントを設定している場合もあります。フリーリプレイスメントとは、人材紹介会社が紹介した人材が、もし補償期間内に早期退職してしまった場合、代わりとなる人材を無償で迅速に紹介するという補償方法のことです。

 

フリーリプレイスメントは、クライアント企業側からすれば早期退職者の代わりの人材を見つける手間を最小限にでき、人材紹介会社にとっては手数料の返金を避け損失を防げるのがメリットです。

 

ただし、フリーリプレイスメントは集客数に自信があり、適切な候補者を状況ごとにすぐに提供できる体制が整えられている人材紹介会社に有効な手段です。集客力が低く、登録している求人者数が少ない人材紹介会社では、フリーリプレイスメントを導入しても該当の企業に合う候補者をすぐに紹介できない場合があります。

 

フリーリプレイスメントを返金規定の代わりに導入するかどうかを検討する場合、自社の規模や集客力、顧客側の業種や求められるスキルとの相性などを考えて制度設計を行うことが重要です。

 

返金規定を設定しない場合に発生しうるコンプライアンス違反と行政処分

返金規定(返戻金制度)を設けないこと自体は職業安定法上で禁止されているわけではありません。しかし、「返戻金制度の有無と内容の明示」という法的義務を果たさなかった場合、または内容を虚偽・不正確な形で提示し続けた場合には、コンプライアンス違反として行政処分の対象となるリスクが生じます。

 

具体的には、職業安定法第48条の3に基づき、労働局からの是正指導・改善命令が下される可能性があります。さらに違反の程度が重い場合には、業務停止命令や、最終的には有料職業紹介事業者としての許可取り消し(職業安定法第32条の9)に至るケースも想定されます。

 

特に注意が必要なのは、人材サービス総合サイトへの掲載情報と自社契約書の内容が実態と一致していない場合です。この状態が長期間続くと、「正確かつ最新の内容に保つための措置」(職業安定法第5条の4第3項)に違反しているとみなされるリスクが高まります。行政処分を受けた事実はサイト上で公表されるため、既存のクライアント企業や求職者からの信頼を一度に失うことにもつながりかねません。

 

返金規定の設定そのものへの義務はないとしても、明示義務と情報更新義務は人材紹介業を適法に運営するうえで避けられない要件です。制度の有無を問わず、自社の返戻金方針については常に正確な形で書面・サイト・契約書の三点に揃えて明示するよう徹底しましょう。

 

返金規定が不明確な場合に起きやすい民事トラブルとそのコスト

返戻金制度を設けていても、その内容が曖昧だったり、契約書への落とし込みが不十分だったりする場合には、早期退職が発生した際に採用企業との間で民事トラブルに発展するリスクがあります。

 

よくあるトラブルの例としては、「返金対象の退職かどうかの解釈のズレ」「免責事由の範囲についての認識の相違」「通知期限の有無をめぐる主張の食い違い」などが挙げられます。双方が自社に有利な解釈を主張する形になりやすく、解決までに時間がかかるほど不信感が積み重なっていきます。

 

最悪のケースでは訴訟に発展し、弁護士費用や訴訟費用といった追加コストが発生することもあります。少額の返還金をめぐる争いであっても、弁護士費用や対応工数を合算するとトータルのコストは返還金額を大きく上回ることも珍しくありません。

 

また、民事トラブルが表面化すると当該クライアント企業との取引継続が難しくなるだけでなく、口コミや業界内の評判を通じて新規開拓にも悪影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを未然に防ぐためには、返戻金制度の有無にかかわらず、「返金を行う場合にはどのような条件のもとで、いつまでに、どのような手続きで行うか」を契約書内に明確な文言で定めておくことが不可欠です。後述する返金規定の各項目と合わせて、契約書の文言を定期的に見直すことをおすすめします。

 

6ヶ月返金規定を採用に取り入れる際の判断基準と社内への説明方法

返金規定の内容を設計・交渉するにあたって、「6ヶ月」という保証期間をどう位置づけるかという判断は、単純に業界相場だけで決めることが難しいテーマです。ここでは、6ヶ月返金規定を求める・または受け入れる際の判断軸と、社内で合意を取り付けるための考え方について解説します。

6ヶ月返金が有効に機能するケースとそうでないケースの見極め方

6ヶ月返金規定は、すべての採用において必要なわけではありません。保証期間を長くすることで採用側のリスクは軽減されますが、人材紹介会社側にとっては財務上の負担が増えるため、実際に自社の状況に照らして判断することが重要です。

 

6ヶ月返金規定の設定が特に効果を発揮しやすいのは、以下のような条件が重なるケースです。

 

  • 欠員が出ると売上や業務遂行に直接影響が出るポジション(営業・技術系の専門職など
  • 入社後の研修・育成投資が大きく、戦力化に3ヶ月以上かかることが見込まれるケース
  • 採用コストが高く、再採用した場合のコスト負担が企業にとって重いケース

 

一方、以下のような場合には、標準的な3ヶ月規定で十分に機能することが多いといえます。

 

  • 比較的短期間で業務を習得できるポジション
  • 採用単価が低く、仮に早期退職が発生しても再採用コストが限定的なケース
  • フリーリプレイスメント(再紹介)によって欠員補充が迅速に見込めるケース

 

この判断軸を持っておくことで、採用企業として人材紹介会社に6ヶ月規定を求める際も、人材紹介会社側として採用企業から要求を受ける際も、「なぜその期間が自社にとって妥当か」を根拠として説明しやすくなります。

 

返金かフリーリプレイスメント(再紹介)かを事前に整理する考え方

返金とフリーリプレイスメントは、早期退職が発生した際の補償としてどちらも活用されていますが、職種や状況によってどちらを優先すべきかが変わってきます。

 

採用企業にとっては、欠員ポジションをできる限り早く埋めることが最優先の場合、現金返金よりもフリーリプレイスメントの方が実質的な利益が大きくなるケースがあります。一方で、ポジションの採用を中止することになった場合や、他の採用チャネルに切り替えた場合には、現金での返金を受ける方が合理的です。

 

人材紹介会社側から見ると、フリーリプレイスメントは手元からキャッシュが出ないメリットがある半面、条件に合う候補者をすぐに提供できる集客力と対応体制が前提となります。自社の集客力・登録者の幅・担当するポジションの難易度を踏まえたうえで、どちらを優先する方針とするかを事前に定めておくと、個別案件の交渉時にも一貫した対応が取りやすくなります。こうした判断基準は、後述する返金規定の具体的な項目設定にも直結します。

採用企業の担当者が社内稟議で返金規定の条件を通すための根拠の整理

採用担当者が「6ヶ月返金規定のある人材紹介会社を使いたい」「返金期間を6ヶ月に延長してほしい」という交渉を社内で承認してもらうためには、「相場だから」という説明だけでは稟議が通りにくい場面もあります。

 

経営層や決裁者に対して説得力を持つ根拠として有効なのが、「採用リスクの発生期間」という観点で保証期間を定義する考え方です。具体的には、以下のような整理が社内説明に使いやすい論点になります。

 

  • 当該ポジションの戦力化期間(例:3〜6ヶ月)=返金保証が必要な期間の根拠
  • 再採用が必要になった場合の概算コスト(紹介手数料+社内工数)=6ヶ月以内の早期退職が発生した場合の損失見積もり
  • 業界標準の保証期間(おおむね3ヶ月以内)との比較と、自社のケースで6ヶ月が合理的である理由の説明

 

「採用に投下するコストのうち、どこまでがリスクとして許容範囲か」という視点で保証期間を設定すると、社内での合意が得やすくなります。人材紹介を継続的に活用していく場合、返金規定の交渉は単発の条件調整ではなく、採用コスト管理の仕組みの一部として位置づけることが重要です。

 

人材紹介会社で返金規定を設定する場合のおもな項目

チェック項目のイメージ

人材紹介会社の返金規定(返戻金制度)は情報公開と明示が義務付けられています。返金規定を設定する場合には、定められた項目を設定することが必要です。

 

人材紹介会社が返金規定で設けるおもな項目について、順に解説します。

 

返金の適用条件

人材紹介会社が返戻金制度を設けている場合は、返金が適用される条件の明示が義務付けられています。適用される場合の具体的な日時や期間などを明記しましょう。適用される条件は、返戻金制度を採用する人材紹介会社それぞれによって異なります。自社の条件についてしっかりと確認した上で、明示するようにしましょう。

 

返金額の割合

返戻金制度で設定された返金額の割合は人材紹介会社や個々の契約内容によって異なるため、明記が必要です。返金額の割合の目安は、早期退職対象者の在籍期間に応じて、以下のように紹介手数料の50〜80%程度に設定されることが多くなっています。

・入社後1ヶ月(30日)未満:手数料の80~100%を返金(例)

・入社後1ヶ月(30日)〜3ヶ月(90日)以内:手数料の50%程度を返金(例)

 

早期退職による返金の対象となる在籍期間としてはおおむね3ヶ月以内が一般的です。ただし、人材紹介会社によっては入社後6ヶ月(180日)以内など長期の補償を提供する人材紹介会社もあります。期間ごとの返金手数料の割合は、企業によって異なります。

 

免責事由

免責事由とは、人材紹介会社が返金しない場合の条件のことです。免責事由も明記しておくことで、クライアント企業との間のトラブルや認識の差異などを防げます。

 

返金規定の実務運用で見落としやすい契約書の確認ポイントと運用管理

返金規定を設定しても、その内容が実務の場面で正しく機能しなければクライアント企業との認識のズレやトラブルにつながります。ここでは、返金が正確に適用されるかどうかを左右する「契約書の細部の確認事項」と「運用上の管理指標」について解説します。

 

返金適用の成否を分ける契約書の詳細チェック項目

返金規定において確認すべき内容は、「返金期間が3ヶ月か6ヶ月か」という保証期間の長さだけではありません。実際に返金が適用されるかどうかを決める細部の条件設定が、運用上の混乱やトラブルを防ぐうえで重要です。以下の各項目は、契約書締結前に必ず確認・明記しておくべきポイントです。

 

起算日の定義:「入社日」か「稼働開始日」か

返金期間のカウント開始点となる起算日は、「雇用契約書に記載された入社日」が業界の標準的な基準となっています。ただし、試用期間や入社後すぐに業務に就かないケース(研修期間など)が想定される場合、「稼働開始日」を起算日とする契約書も存在します。どちらを基準とするかによって返金期間の終了日が変わるため、契約書の文言で明確に定義されているかを確認しましょう。

 

在籍日数の数え方:「暦日」か「30日単位」か

在籍日数の計算方式も、解釈のズレが起きやすい箇所のひとつです。「入社後90日以内」と定められている場合でも、土日祝日を含む「暦日」で数えるか、実働日ベースで数えるかによって実質的な保証期間の長さが変わります。業界の標準は土日祝日を含む「暦日」での計算ですが、契約書に計算方式が明記されていない場合には、双方で確認しておくことが重要です。

 

通知期限:退職確定から何日以内に連絡が必要か

返金の適用を受けるためには、採用企業から人材紹介会社に対して「退職が確定したことの通知」を一定期間内に行う必要があります。この通知期限が設定されていない、または期限が曖昧な契約書では、退職から長期間が経過した後に返金請求が来るリスクがあります。退職日から「14日以内」や「30日以内」といった期限を契約書に明記しておくことがトラブル防止につながります。

 

必要な証憑:何の書類で退職の事実を確認するか

返金の申請には、退職の事実を証明する書類の提出が必要です。一般的には退職証明書(会社発行)や雇用保険被保険者離職票などが使われますが、契約書に「必要な証憑の種類」が明記されていないと、書類の不備や用意できる書類の認識の違いで手続きが滞ることがあります。どの書類をもって退職を確認するかを事前に取り決めておきましょう。

 

返金運用の品質を高めるための管理指標(KPI)の考え方

返金規定を設定して終わりにするのではなく、実際の運用を改善・管理するための指標を持つことが中長期的な品質向上につながります。人材紹介の現場での返金運用において意識しておきたい指標の例は以下の通りです。

 

退職確定から紹介会社への通知までの日数:通知が遅れると証憑の収集が難しくなり、返金手続きが複雑化します。退職確定後、速やかに通知を行う社内フローが整っているかを確認しましょう。

 

期限超過による返金対象外の発生件数:通知期限を過ぎてしまい、本来は返金対象であったにもかかわらず申請できなかったケースの件数を把握することで、社内の連絡フローの課題が見えてきます。

 

早期退職発生率(在籍3ヶ月・6ヶ月以内):早期退職の発生率を定期的に把握することで、特定の職種・業種・企業規模での離職傾向を分析し、マッチング精度の改善に活かすことができます。

 

これらの指標を定期的にモニタリングすることで、契約書の文言の見直しが必要かどうかの判断材料にもなります。返金規定は設定すること自体がゴールではなく、実運用の中で継続的に精度を高めていく性質のものと捉えるようにしましょう。

 

返金が発生した際の経理・税務処理と返金方法の選択肢

早期退職による返金(返戻金)が実際に発生した場合、人材紹介会社の経理実務においては正確な処理が求められます。また、「どのような形で返金するか」という返金方法の選択肢もあらかじめ把握しておくことが重要です。

 

返戻金発生時の経理仕訳と消費税の処理方法

返戻金の支払いが発生した場合、経理上は過去に計上した紹介手数料の売上を減額する形で処理を行います。処理方法としては、「売上高のマイナス(売上戻り)」として直接減額するか、「売上割戻高」などの勘定科目を用いて仕訳を起こすかのいずれかが一般的です。どちらの勘定科目を使用するかは自社の経理方針によって異なりますが、継続性を持たせるために社内ルールとして統一しておくことが望ましいです。

 

消費税の取り扱いについては、人材紹介の紹介手数料は課税売上に該当するため、返戻金が発生した場合には消費税を税込みで計算したうえで連動して減額処理する対応が必要です(売上に係る対価の返還等として処理)。仕訳を計上するタイミングは、原則として返金の事由が確定した「退職日」が基準となります。

 

特に注意が必要なのは、退職日と経理処理のタイミングが決算期をまたぐケースです。この場合、退職の事実が発生した事業年度内に適切な売上の修正を行わないと、売上の期間帰属がズレて利益の過大計上につながる可能性があります。担当者は退職の事実を把握した時点で速やかに経理部門へ報告する社内フローを整え、月次・年次決算に支障が出ないよう連携を徹底してください。顧問税理士と早期退職時の標準的な仕訳ルールと勘定科目をあらかじめ定めておくと、決算期に混乱が生じにくくなります。

 

返金方法の選択肢:現金返金と次回請求との相殺

返金の実行方法は、「現金(振込)による返金」のみが選択肢というわけではありません。実務上、次回以降の紹介手数料の請求から返金相当額を差し引く「次回請求分との相殺」が採用されるケースもあります。

それぞれのメリット・デメリットを整理すると以下の通りです。

 

現金(振込)による返金:採用企業にとって返金を直接受け取れるため透明性が高く、双方の清算が明確になります。一方、人材紹介会社側は一時的なキャッシュアウトが発生し、次の取引がない場合には相殺の選択肢が取れません。

 

次回請求分との相殺:人材紹介会社側はキャッシュアウトを避けられ、次回の取引につながる関係継続のきっかけにもなります。ただし、次回の紹介が発生しない場合には実質的に相殺が機能しないため、採用企業が現金返金を希望する場合には個別の合意が必要です。

 

相殺を選択する場合には、どの請求に対して何円を充当するかを書面や請求書上に明記することが重要です。口頭のみでの取り決めは、後から「相殺を合意した・していない」という食い違いを生む原因になります。どちらの方法を採用するかについても、可能であれば基本契約書内に「返金の方法は現金振込または相互合意による次回請求との相殺とする」といった形で選択肢と確認方法をあらかじめ明記しておくと安心です。

 

令和6年度から特定分野において「6ヶ月以内に離職した場合」の返戻金制度設定が明確な認定基準に

手帳と「UPDATE」の文字

「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の認定基準見直しを受け、令和6年度から医療・介護保育分野における人材紹介業の認定必須基準に「6ヶ月以内に離職した場合」の返戻金制度の設定と、具体的な内容の明示が含まれるようになりました(※4)。

 

さらに基本基準には、「求人者から紹介手数料や返戻金の設定方法について説明を求められた場合」には、紹介手数料や返戻金に関する統計データ等を使い、自社のサービス内容や紹介手数料及び返戻金を設定した理由を説明することで求人者の理解を得るという点も追加されています。

 

この改正の主旨としては、6ヶ月以内に離職した場合の返戻金制度の設定と内容の明示、さらに紹介手数料に加えて返戻金の設定方法についても説明を行うことを認定基準に導入することで、医療・介護・保育分野における人材確保やマッチングの質向上につなげることが目的であるとされています。

 

※4 出典:厚生労働省「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度の認定基準見直しについて」

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001223822.pdf

 

人材紹介における返金規定設定や義務の内容について把握しておこう

本記事では、人材紹介における返金規定に関する基礎知識を大まかなポイントに絞って解説しました。さらに詳しく把握したい方はぜひ、記事内でリンクしている厚生労働省の各資料を参照ください。

 

返金規定(返戻金制度)はクライアント企業側視点での、人材早期退職リスクを減らすための制度です。法的には必ずしも設定する義務はありませんが、トラブル防止のため、そしてクライアント企業から選ばれる人材紹介業となるために、設けている企業がほとんどです。人材紹介業に携わる場合には、人材紹介の返金制度についてしっかり把握しておきましょう。

 

 

この記事の監修者

長沢 ひなた

外資系アパレルで販売・チーム運営を経験後、美容クリニックのカウンセラーに転身。60名中3名のみのトップカウンセラーとして表彰され、マネージャーとして大規模なチームマネジメントも経験する。


「人生単位での変化」を支援したいとの想いからキャリアアドバイザー職へ転身し、入社半年での異例の昇格、1年でリーダーに就任。現在は、キャリアアドバイザー職への転職を専門に、業界構造を熟知した的確な支援を行っている。▶︎詳しく見る

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